伝説の女優、サラ・ベルナール。１９世紀半ばから２０世紀初頭にかけて、フランス演劇界は彼女を中心に回っていました。薄幸な幼年期、そしてデビューが決まった18の時には、先輩女優に平手打ちを見舞ってすぐに退団。しかし彼女の素質、天性の歌声はだんだんと認められていき、作家、彫刻家としても名声を馳せていきました。1900年のパリ万博は、サラの舞台とエッフェル塔みたさに人が集まったといわれています。また、当時まったく無名だった画家、アルフォンス・ミュシャにポスターを依頼し、その洗練されたタッチが大反響となりました。これが今もなお残るデザイン様式のひとつ、「アール・ヌーヴォー」の始まりです。

生涯において『椿姫』の舞台には3000回以上立ち、当時は革新的だった「男役」をこなすなど、精力的に仕事をこなしてきたサラですが、61歳の時にリオ・デ・ジャネイロの公演で右膝を怪我、その後切断となりました。普通の人なら、ここでリタイアを考えるはず。しかしサラは71歳の時、舞台や映画で復帰を果たしたのです。もちろん「老い」について、女優として悩んだ時期もあったはず。これを打ち破り、強靭な精神で前向きに生きた彼女は「女は自分で考えて、決めた分だけ年をとればいい」という主義を通したといえます。女に限らず、男も同じ。学ぶことや恋をすること、考え抜くことや行動することをやめた（飽きた）時点で、人は老いていくものです。元気の秘訣は、まわりを気にせず「自分で決める」ことなんですね。