養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

夏バテの雑学

「夏バテ」の語源は競馬に由来する?東洋医学と西洋医学で異なる夏バテの概念とは?幼児期の夏が免疫力を左右する?!今月は夏バテに関する雑学をご紹介します。

「夏バテ」の語源は競馬に由来?

熊

「夏バテ」「夏負け」「暑気あたり」——どれも夏の暑さで体調を崩してしまうことを意味する言葉ですが、夏負けも暑気あたりも夏の季語になっているほど古くから用いられてきた言葉です。
一方、夏バテという言葉が使われるようになったのは、まだクーラーが一般家庭に普及していなかった昭和30年代の高度成長期の頃です。現代では、「冷房病」も夏バテの一種ですが、クーラーが憧れだった半世紀前は、まさか夏に冷えが原因で体調を崩すなんて想像もしなかったでしょうね。

夏バテの語源は諸説ありますが、有力なのは、競走馬が走り疲れて足がもつれることを意味する競馬用語「ばたばたになる」が縮まって「ばてる」になったという説です。
もう1つ有力なのは、「疲れ果てる」の「はてる」が転じて「ばてる」になり、スポーツ選手たちが俗語として使っていたのが広まったという説です。
「暑くて疲れ果てた」を各地の方言でいうと、たとえば青森では「暑くておたってまたじゃ」、山口では「暑くてつくだったっちゃ」、長崎では「暑くてきゃーなえたばい」となります。
もし意味を知らなくても、暑い日にウンザリ顔でそんなふうにいわれたら、なんとなく「あー、暑くて夏バテしたのね」と即座にわかるような雰囲気たっぷりの方言が多いですね。

夏バテは病気? 東洋医学と西洋医学の違い

西洋医学では夏バテという病気の概念はなく、胃腸機能低下や自律神経失調症といた症状別に対処します。
一方、東洋医学では、夏バテのことを「注夏病(ちゅうかびょう)」という病気の一種と考えます。注夏病に漢方薬を処方したという記述は、約800年前の中国の医学書にも出てきます。その漢方薬は、現代でも暑気あたりや食欲不振、下痢、夏やせといった夏バテの症状に処方されており、東洋医学では古代中国から現代まで、夏バテが治療の対象になっていることがよくわかります。
江戸時代の儒学者・貝原益軒は、中国の漢方医学書をベースにした名著『養生訓』の中で、「夏は人の肌膚が大いに開くため、外邪が入りやすく、涼風にあたるべからず。陰気隠れて腹中にあるゆえ、食物の消化すること遅し」「夏は温かいものを食べて脾胃をあたため、冷水のむべからず」と語っています。
外からも内からも体を冷やさないことが夏バテ対策の基本であるという東洋医学における養生の知恵は、今も昔も変わらないようです。

乳幼児期の夏が免疫力を左右する?!

健康的な人の平熱は36.5~37度あるといわれますが、近年は36度以下の低体温の人が増えています。
低体温の人が増えている一因は、エアコン完備の生活の中で、汗をかいて体温調節する機能が衰えていることが挙げられます。
通常、暑いときは汗をかいて体温調節する必要がありますが、汗をかくために必要な能動汗腺が少ないと、十分に汗をかけず、体は恒常性を維持するため、生体防御反応で基礎代謝を低くして、熱が出ないようにします。その結果、低体温になってしまうのです。
能動汗腺の数は、2歳半位までに育った環境に影響されます。たとえば生まれたときから熱帯に住んでいる人は、日本人の能動汗腺の平均数より多いのですが、日本人でも2歳半まで熱帯で育てば、能動汗腺は熱帯の人とほぼ同等になります。
平熱が1度上がれば、免疫力が5倍に上るといわれますが、子どもを体温の高い人に育てるには、暑い夏にちゃんと汗をかかせて体温調節機能を衰えさせないことが大切です。もちろん、熱中症対策は欠かせませんが、幼児期の夏にどれだけいい汗をかいたかが、その人の免疫力に大きな影響を与えるのです。