養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

アレルギーの雑学

花粉症体質を改善するアノ療法に使われる食品とは?「ウィンブルドン」テニスは花粉症との戦い?意外な原因で急性アレルギーになってしまった少女とは?今月はアレルギーにまつわる雑学をお送りします。

花粉症治療にひと役買っている“食パン

花粉症に悩まされている方はご存じかもしれませんが、現在は多種多様な花粉症対策があります。

たとえば、「減感作療法(げんかんさりょうほう)」というもの。これは、スギ花粉症の人に、スギのエキスを定期的に注射する対策法です。スギ花粉自体は毒ではありませんが、まさに“毒をもって毒を制す”かのような方法ですね。なぜアレルギー症状が出なくなるのか、その理由は明確にはわかっていませんが一定の効果が出るケースも多く、この療法を取り入れている医院もかなりあります。ただ、春先においそれと医院に出向いてハイ治った!というわけにはいきません。症状改善までに数年間を要することもある、根気を求められる療法です。今では、食パンにスギのエキスを含ませて舌の裏側に置き、唾液で溶かして体内に取り入れる減感作療法もあります。ただ、重症の方に対してこの療法は使えません。

鼻の粘膜にレーザーをあてて焼くレーザー治療にも注目が集まっています。想像しただけで痛くなりますが、焼くのは上皮の0.5mm程度。実際に痛みや出血も伴いません。元来はアレルギー性鼻炎の症状を持つ患者に対して行われていましたが、昨今では花粉症対策にも適用されるようになりました。ただ、効果が出るまで一定期間を要するため、スギ花粉症対策としては1月いっぱいの治療が目安。花粉が飛散している時期に行うと逆効果になる可能性も考えられます。

そしてもうひとつ、発想の転換といえる方法が「スギのない地域に行く」。なにせ仕事や生活がありますから、誰もがとれる方法ではありません。しかし、時間に融通が利く中には、花粉症のシーズンになるとスギやヒノキが自生しない沖縄へ“避難”し、ウィークリーマンション等で期間限定の沖縄暮らしをするケースもあります。寒さを逃れる意味合いも兼ね、冬場から花粉飛散時期が終わるまで滞在する人もいるのだとか。社団法人宮古島観光協会でも、積極的に“花粉逃避”による滞在誘致を行っています。

スギ花粉逃避宮古島ツアー(社団法人宮古島観光協会)
http://www.miyako-net.ne.jp/~kankou-1/kafun_tohi.html
時間に融通が利く、ご年配の夫婦で参加する方もいらっしゃるそうですよ。



「ウィンブルドン」でテニスを観るならマスクは必須!?

花粉症の歴史を振り返ってみると、19世紀初頭まで遡ります。

イギリスの農夫が牧草を刈り取って運んでいる際、くしゃみやのどの痛み、涙が止まらないといった症状が相次ぎます。当時はこの現象を「hay fever(枯草熱)」と呼んでいました。学者による原因分析の結果、アレルギーの元はイネ科の牧草であるカモガヤにあることがわかり、そこから「花粉症」と呼ばれるようになります。

カモガヤの花粉が飛散する距離は数十m程度。スギに比べると拡散しにくいのですが、牧草地や芝生の多いイギリスならではの花粉症だったといえるでしょう。今でも5月頃から8月頃にかけてイギリスでは花粉症に悩む人が多く、「芝生の回りでキャンプしてはダメ」と言われているほどです。ただ、この時期に「芝生のある地域に行かざるを得ない」人もいます。それはテニス関係者やファンの方々です。 テニスの四大国際大会のひとつ、ウィンブルドン選手権が開催されるのは、芝花粉症まっただ中の時期。しかも試合会場周辺は、延々と芝生が広がっています。入場する際はここに行列するかたちになると同時に、宿代を安く済ませたい方は芝生の上にテントを張り、開催期間を通してここで暮らす人もいるほどです。もし日本から観戦に出向くなら、スーツケースにマスクをしのばせておくことをおすすめします。

一方、日本の花粉症といえば、その大半がスギ花粉によるものといわれています。スギ花粉症が最初に報告されたのは1964年のこと。以来、増加の一途を辿っているのはご承知のとおりです。

ここまでスギ花粉症に悩む人が多い国は、世界でも稀。その理由は、日本が戦後に行った「スギの大量植樹」にあります。終戦で焼野原となった日本には、大量の材木が必要でした。そのため、50年代には森林伐採が盛んになります。しかし、木を切り倒しすぎてしまったために、山々では治水が行き届かなくなり、ガケ崩れや洪水の危険が高まりました。そこで、新たに木を植えることになったのですが、この時、選ばれたのが杉の木だったのです。本来なら、さまざまな種類の木を植えるべきだったのですが、杉は成長が早く、木材としての価値も高いということで、杉ばかりを植えてしまいました。利益優先で突き進んだ高度成長期のツケが、今になって出てきたといえるかもしれません。

ボーイフレンドとのキスが原因で・・・

「アナフィラキシー」という言葉をご存じでしょうか?これは急性アレルギー反応のひとつで、じんましんなどの皮膚に症状が現れたり、時には呼吸困難やめまいが生じるもの。さらにショック症状(アナフィラキシー・ショック)に陥ると、命も落としかねません。

人によってアナフィラキシーを引き起こす原因は様々ですが、「蜂に刺される」こともそのひとつ。2010年には、日本で20人が蜂に刺されることによって命を落としています。そのほとんどが、アナフィラキシーショックに陥ったことが原因でした。蜂の毒が全身に回るのではなく、体に侵入してきた毒に対する過剰なアレルギー反応が原因です。

実は、記録に残っている人類初のアレルギー症状も「蜂刺され」。紀元前27世紀、古代エジプト王朝のメネス王が蜂に刺されて死亡したことが、象形文字によって今に残されています。

また、食物アレルギーでもアナフィラキシーを起こす場合があります。卵や小麦、牛乳、エビやカニなどの甲殻類等がアレルギーの原因になりやすい食物です。これらに比べてアレルギーに陥る頻度は高くないものの、重症化してアナフィラキシー・ショックを引き起こしやすいといえるのが蕎麦アレルギーやピーナッツアレルギーです。

2005年、カナダで痛ましい事件が起きました。15歳の少女がピーナッツアレルギーでショック状態に陥って死亡したのですが、彼女自身はピーナッツを口にしていませんでした。原因は、ボーイフレンドとのキス。彼女が極度のピーナッツアレルギーだったことを知らず、彼氏はキスする前にピーナッツバターを塗ったサンドイッチを食べていました。

「たかがアレルギー」と考えることは禁物ですね。自分だけでなく、周囲の人のアレルギーにも目を向けたいものです。