養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

「森」が育む、人々の健康

日本の森林は、国土に占める割合がおよそ70%。フィンランドに次いで世界第二位の「森の国」なんです。
森は酸素を作り、木材や山の幸をもたらし、時には洪水などの自然災害を防ぐなど、人々のために役立ってきました。そして昨今では、森が私達の健康そのものに作用することが明らかになりつつあります。

森が私たち人間にもたらしてくれる素晴らしいパワーについて、今回はお送りいたしましょう。

「殺し」のパワーが人に効く!?

人間は得てして「浴びること」を欲します。「入浴」をはじめ「日光浴」や「海水浴」など、どれも一様に心身をリフレッシュさせる行為として、もてはやされてきました。「森林浴」もまたしかり。森の中に入って深呼吸すると心地よさを感じることは、人類共通といってよいかもしれません。


では具体的に、「森」の何が心地よいのか。日々の生活から離れた場所へ赴くことにより気分がリフレッシュする点は他の旅行においても同じですが、森特有の心地よさは、川のせせらぎや枝葉のざわめきが「1/fゆらぎ」といわれる人間に心地よい音の波長を作り出している点が挙げられます。また、木々が酸素を作り出すため、排気ガスなどが蔓延する都会よりも空気の質がよいこと、木々の「緑色」が目に優しく、リラックス効果をもたらすことなどが挙げられます。蒸散作用等によって気温を低く保たれていることも心地よさの一因です。


さらに昨今では科学的な検証が行われ、森のもたらすパワー、森の中に漂う「物質」が解明されつつあります。細胞の生理機能を高め、新陳代謝を活発にするといわれている「マイナスイオン」もしかり。そして昨今よく耳にするのが「フィトンチッド」という物質名です。


フィトンチッドという言葉、響きだけをみれば妖精の名前みたいですよね。しかしもともとは、ロシア語で「植物」を意味する「Phyto」と、同じくロシア語で「殺す」を意味する「cide」から作られた造語です。1930年頃、ロシアの科学者ボリス・トーキンが、植物を傷つけると周辺の細菌類が死ぬ現象を発見。植物が発する揮発性物質を総称して「フィトンチッド」と名付けました。


なんとも恐ろしいと物質だと思うかもしれませんが、木々は動物のように何者かに襲われたとしても身動きできません。ですからそういった作用があることは、ある意味理に叶っているといえます。一方人間にとって、この殺菌・抗菌作用などは「良いもの」として捉えることができます。


森の中に入ると感じる木々の香り、これもフィトンチッドの効果だといわれています。他にも肝機能向上や生理機能促進、副交感神経が刺激されることによる精神安定効果、ストレス解消などの効果がさまざまな実験によって判ってきました。


しかし、科学的に解明する前に、人々は大いにこの力を利用してきた歴史があります。


身近な例では、柏餅や桜餅。餅をくるむ葉には抗菌効果のあるフィトンチッドの一種が含まれていて、食べ物を腐りにくくしています。葉にくるまれている押し寿司なども同様です。食材、とりわけ生鮮品の運搬に、昔は木の葉、ひいてはフィトンチッドが一役買っていたわけです。


また、お寿司屋さんで寿司を乗せる飯台はヒノキで作られたものが多く、これもヒノキに含まれるヒノキチオールをはじめとしたさまざまな抗菌性の物質が一役買っています。また、家作りにもヒノキやヒバが重宝されていますが、これも虫がつきづらい木材を選んだ結果といえるでしょう。


現在、森に関する科学的な検証は世界規模で進み、れっきとした「療法」として捉え、森の中で行うウォーキングなどを医療レベルで処方している国もあります。特にドイツの森林療法は120年ほど前から確立され、現在その国土には400あまりの森林保養地があり、多くの人々が療養しています。


日本でも行政レベルで検証が進み、2006年4月には林野庁が「科学的効果が認めらた森」として、全国の森林6ヶ所を「森林セラピー基地」に、4ヶ所を「セラピーロード」に認定しました。日本における森林浴発祥の地といわれる赤沢自然休養林(長野県)や、ブナの原生林が広がる温身平(ぬくみだいら・山形県)などが選出されています。


都会に暮らしている方、日々のストレスが貯まっている方は、ぜひ森を訪れて、存分にパワーを受け取ってみてはいかがでしょう。