養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

人々の“元気”を育む「薬酒」

「酒は百薬の長」といわれるとおり、お酒は古くから人々の健康と「元気」のために役立ってきました。
旧約聖書にも「酒は度を超さなければ、人にとって生命そのものに等しい」と記されているほどです。

その酒のルーツをどんどん遡っていくと、「薬」の要素はどんどん色濃くなり、「薬酒」にたどりつきます。お酒の歴史は薬酒の歴史、といっても過言ではありません。

今月のテーマは「薬酒」。人々にどのように関わってきたのか、雑学を交えつつご紹介しましょう。

「薬酒」古今東西

病気になったときによく食べる「おかゆ」。カラダの機能が弱っているがゆえ、消化しやすいようにお米を煮るという工夫から生まれたものです。「薬酒」もまた、同じような理由で生まれました。薬草などをそのまま食すのではなく、水で煮たりスープに溶かし込んだりして病人でも摂取しやすい工夫がなされ、最終的に太古から薬とみなされていた「お酒」と混ぜるといっそう効果的であることがわかったのです。


「薬酒」の起源としてまず思いつくのは中国。古代中国の歴史書「史記」の中に、戦国時代の名医、扁鵲(ヘンジャク)が治療時に用いていたとあります。また、西洋においても西暦1年、ローマ時代の医師ディオスコリデスが遺した書物に57種の薬酒が記されています。


今となっては「お酒は飲んで騒いで楽しむこと」という意識が人々の中にあり、飲む場所といえば居酒屋、売っているのは酒屋と相場が決まっていますが、もともとは神事や医療、福祉の現場で重宝されてきたため、当然ながら「扱う場所」も今の常識とは異なっていました。


たとえば「ジン」。現在ではさまざまなカクテルのベースとして世界中で飲まれているスピリッツですが、当初はヨーロッパで腎臓などの治療薬として生まれたとされています。そして造っていたのが、なんと修道院。なにしろ「薬」ですから「修道院でお酒なんて不謹慎な!」という批判もなく、修道士たちは自らの滋養強壮と信者の健康のためにジンを提供していたといいます。ちなみにその名残で、現在でも南フランス地方にはジンを製造している修道院があります。


一方、日本も世界に負けじと古くから薬酒を飲んできました。馴染み深いものでは元旦に飲む「お屠蘇」ですね。「蘇」という悪鬼を屠(ほふ)って無病息災を願うことが命名の由来ですが、胃を丈夫にするといわれる山椒や肉桂などの薬草を酒やみりんに漬けて造るお屠蘇は平安時代から宮中でもてはやされ、幕末の頃には庶民の間にも浸透していたといいます。


現在も、薬酒は世界中の人々の健康と元気を支えています。良薬は口に苦しといいますが「百薬の長」であるお酒と合体すると、美味しく楽しく薬効成分を取り入れることができる・・・単純な理屈ではありますが、「世紀の大発見」といってもいいくらいだと思います。皆さんもぜひ愛飲して、元気生活を送ってください。