養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

原始人に学べ!?歯の健康は、カラダの健康

健康を気遣いながら生活する人が増えている昨今ではありますが、皆さん「歯」はいかがでしょう。ついつい「痛くなってから」歯医者に駆け込む人も多いのでは?

歯の健康とはこれすなわち、カラダの健康です。
近年は研究が進み、虫歯や歯周病が身体全体に及ぼす影響が解明されつつあります。

歯科技術もおおいに進歩しましたが、それこそ昔は過酷な治療が行われていました。もっと昔には「虫歯がなかった」ということも!?

そのあたり、雑学として歴史を紐解きつつ、「歯」に着目したコラムをお送りいたしましょう。

縄文は4000回、平成は600回!?

今から遡ること四千年前。虫歯は、口の中に棲む「虫」が歯を食べて穴が開いてしまうと考えられていました。その考えが覆り、口中の細菌が作った「酸」が歯を溶かすといったことが解明されたのは19世紀末のこと。長い人類史からみれば、ごくごく最近のことだったのです。


古代の人々は虫歯に見舞われたとき、まじないや麻痺効果のある植物を利用していました。ここまでは祈祷師の仕事です。やがて手に負えなくなれば抜歯となりますが、現在のような歯科医はいません。ここからは、いわゆる「抜歯屋」の仕事。入れ歯を作る職人が行うこともあれば、理髪師が抜歯を兼任することもありました。また、今となっては考えにくいことですが東洋、西洋問わず、抜歯は「見世物」としての意味合いも強く、道端で大道芸人によって抜かれることもしばしば。こういったことを耳にするたびに「今の時代に生まれて良かったなぁ」と思いますよね。あらためて「歯は大事にしないと」と考えさせられます。


ここまで書くと昔の人々は「予防」しなかったのではと思われがちですが、ちゃんと歯のケアもしていました。古代インドでは小枝の先端を噛み潰した棒で歯を磨いていたといいます。他の地域でも、歯磨きに使われたと思しき動物の骨などがみつかっており、現在のようにブラシ部分があるものも発見されています。日本では平安朝の頃に楊枝で歯のケアをすることが広まり、塩などを使って指で磨くこともありました。余談ですが江戸時代には「入れ歯」もあり、かの徳川家康も木製の入れ歯を使っていたとか。


では古代よりももっと遡って原始時代はどうだったのか?


なんと、虫歯自体が存在しなかったといわれています。調理するといえば「焼く」くらいで、ほとんど硬いものしか口にしなかった時代です。硬い食べ物は必然的に「噛む」行為を強いますので、その分唾液が分泌し、口内の細菌を洗い流すとともに「酸」を中和する作用が働いていたのでしょう。


「煮る」「炊く」などの調理法を人類が覚えて食べ物が柔らかくなると、噛む回数も減りはじめました。一説によると、一回の食事で「噛む」行為は、縄文時代には4000回、戦前で1500回、そして今や600回といった具合に激減しています。同時に柔らかい食べ物は歯にこびりつきやすく、虫歯や歯周病の原因となる歯垢(プラーク)が生じることになります。


虫歯や歯周病、つまり充分に「噛む」ことができない状況は、身体にとっても悪影響を及ぼします。胃腸などの内臓系にも負担をかけますし、頭痛や肩こり、姿勢の悪化、顔の表情筋の衰えがもたらす脳の働きの低下など、挙げればきりがありません。また、口内の歯垢に含まれる黄色ブドウ球菌などが誤って肺に至り、肺炎を引き起こすといったショッキングな調査結果も発表されています。


そこで今から、柔らかい食べ物は厳禁!といっても無理ですよね。でも、意識して噛む回数を増やすことはできます。さらに食後に生野菜やリンゴなど、歯ごたえのある食物繊維を食べることによって、その食材が歯垢を落としてくれる効果があります。もちろん食事のみならず、歯ブラシや糸ようじなどでケアすることも必要不可欠です。
ぜひ皆さん、身体を気遣うのと同じように、歯にも気配りをしてみてください。