人の体温には1日を通じてリズムがあり、眠りとの関係も深いことが分かっています。
活動的である日中、体温は上昇しますが、夜になると体にたまった熱(深部体温)を下げるために手や足先の末梢の血管を拡張させて血流量を増やし、熱を放出(熱放散)します。
その体温の変動が「休息」のサイン(=眠気)となり、体は自然と眠りの体勢に入っていきます。このタイミングと就寝がちょうど重なると、深い眠りを得ることができます。
赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのも、同じメカニズム。まさに、入眠に向けた体温変化の“準備”なのです。
ところが、体が冷えている人は日中も体温が上がらず、夜になっても「これ以上体温を下げてはいけない!」という体の防御機能が働いて、熱放散が行われにくくなります。その結果、体温の変動が少ないために「休息」のスイッチが入りづらく、寝つきが悪いなど睡眠に障害が生じてしまうのです。
また、冷えと眠りには、自律神経も関係しています。本来、夜の体温の変化に合わせて活動神経である「交感神経」からリラックス神経である「副交感神経」に切り替わりますが、体が冷えていると体温を逃がさないように防御機能として、「交感神経」が優位に働き続けます。そのため寝ている間もリラックスできず、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚める……といったことが起こります。
女性は冷えに悩む人が多い傾向にあります。体の熱の約60%は筋肉で生み出されているため、一般的に筋肉量が少ない女性は冷えやすいのです。さらに、最近の若い女性にも増加中の「過緊張」が加わるとますます冷えは助長されます。
過緊張とは、ストレスフルな環境が原因で常に心身が緊張した状態のことで、睡眠の質にも悪影響を与えます。
ストレスを抱えていたり、寝る直前までパソコンや携帯電話を操作していたりと、日中の緊張状態を上手に緩和できないまま就寝すると、熟睡できず、寝ている間も興奮した状態が続きます。
冷えや過緊張により良質な睡眠がとれないと自律神経が乱れて血流が悪くなり、体がますます冷える……という悪循環に。
この悪循環を断ち切り、健康の要である良質な睡眠をとるためにも、冷えない体づくりはとても大切です。
就寝時に胃腸が活発に動いていると、眠りが浅くなるので夕食は就寝3時間前までに済ませる。
生姜やねぎを入れた鍋料理など、体を温める食材を積極的に摂るよう心がける。
寝る前に38~40度のぬるめのお湯に浸かる。お風呂に入れない時は、足湯だけでも効果的。ただし寝る直前に入るとかえって体が火照って寝つきが悪くなるので就寝1~2時間前にゆったりと入るようにする。
冷えを和らげ、快眠を得るには、体を内から温めて血行をよくし、じっくりと体質から改善していくことが大切です。“冷えない体”づくりには、生活習慣を見直し、無理のない生活を心がける他、東洋医学的アプローチとして「薬酒」を取り入れることも一案です。薬酒は継続的に飲用することで血行を促進し、冷え体質を改善していく効果が期待できます。また、リラックス効果もあるため、就寝前のナイトキャップとしてもおすすめです。気長に続けましょう。