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  • 【2007年11月号】子供を教育するばかりが親の義務でなくて、子供に教育されることもまた、親の義務かもしれないのである。

子供を教育するばかりが
親の義務でなくて、
子供に教育されることもまた、
親の義務かもしれないのである。

寺田 寅彦 1878年~1936年

コンペイトウに注目した天才

実験物理学者にして随筆家。しかし、あらゆる肩書きを超越した「ユニークな人」とも称された人物、寺田寅彦。「科学者は頭がよいと同時に、頭が悪くなければならない。頭が悪くなければできないことはこんなにある」という発言が、そのまま彼の科学に対する姿勢を現しています。

東京帝大を主席で卒業しながら、当時の人々が「なぜこれを?」と思うような“身の回り”の研究に没頭。ガソリンを水に浮かべると波模様ができるのはなぜ?金平糖の角はなんで出来るの?これらの理論は現在でこそ、最先端科学である「フラクタル」や「カオス」などとして学問の俎上に乗っていますが、当時は「なぜこれを?」と周囲に訝しがられていました。

ちなみに夏目漱石の弟子でもあり、漱石の『我輩は猫である』に登場する水島寒月氏という人物のモデルになったといわれています。

なぜだ?答えは子供に教えてもらおう

他にも俳句、絵画、カメラ、映画評など、芸術的分野も幅広く愛し、作品づくりに精を出していました。さらにバイオリンをこよなく愛し、門弟たちや子供たちとの合奏も楽しんでいたようです。また、彼が絵画を描き、完成したものを妻や子供に見せて評してもらい、その評をヒントに、新しく、かつ楽しい科学的発見をすることも。

「何かのプロ」というよりは、異なるジャンルの事柄を自分の中で「繋げて考える」力を持っていた人物といえるでしょう。子供達の言葉や行動、日常のあらゆる些細なできごと。それらを偏見に惑わされずに見つめ、耳を傾け、自分を高めていく姿勢の素晴らしさ、ゆるぎなさを、彼の生き方から感じます。師匠と弟子の関係でありながら、お互いの専門領域の話を教えあい、友達のようにふるまっていた漱石と寅彦もまた、同じような「教育し合う」関係だったといえそうです。