養命酒ライフスタイルマガジン

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香りの雑学

「香りを“嗅ぐ”ではなく“聞く”のはなぜ?」「香りで男女の相性がズバリわかるって本当?」「犬とゾウ、どっちの方が鼻が利く?」——今月は香りの雑学をご紹介!

香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」のはなぜ?

日本には古くから香りを愛でる文化がありますが、そのきっかけとなったのは、仏教と共に中国より伝来したお香でした。お香は主に仏事に使われていましたが、平安時代には貴族たちが好みの香を独自に調合し、室内や着物にたき染める「薫物(たきもの)」に用いられ、殿上人たちの風雅なライフスタイルに欠かせないものになっていきました。それがやがて、香りを嗅いでその産地や種類を言い当てる遊びに発展し、室町時代には、茶道や華道のような芸道として、日本独自の「香道」が生まれました。香道に使われる香木は、原産国などから「伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真那伽(まなか)・真南蛮(まなばん)・佐曾羅(さそら)・寸聞多羅(すもたら)」の6つに分類されました。さらに香りは味覚に例えて「辛・甘・酸・苦・鹹(かん)」の5種に分けられ、「六国五味(りっこくごみ)」という分類法が確立しました。こうした香りを嗅ぎ分けることを、香道では「香りを聞く」といいます。また、香炉にたいた香木の香りを鑑賞することを「聞香(もんこう)」といいます。「香りを聞く」とは奇妙な表現ですが、天然香木には魂が宿っていると考えられていたため、くんくんとにおいを「嗅ぐ」のは無粋とされ、心から香りと向き合うという意味で「聞く」という表現になったといわれています。さりげない日本語の中に、目に見えない香りに対する思いやりの心が宿っているのです。

香りで男女の相性がズバリわかるって本当?

異性の着たTシャツのにおいを嗅ぐだけで、男女の相性がわかる——そんな研究結果をスイスにあるベルン大学の動物学者クラウス・ヴェーデキント博士が1995年に発表しました。博士の実験によると、男性44人が2晩ずっと着ていたコットンのTシャツのにおいを49人の女性に嗅いでもらった結果、女性は自分の遺伝子パターンと最も異なる遺伝子パターンを持つ男性のTシャツを無意識に選ぶ傾向があることが判明しました。この遺伝子とは、免疫を司る「HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子」のことで、別名「恋愛遺伝子」とも呼ばれています。自分とHLA遺伝子の型が異なる異性を好む傾向があるのは、そのほうが免疫力の強い子どもが生まれやすいという説もあるようです。思春期の娘が、父親のにおいを毛嫌いすることがあるのも、父親と遺伝子が近いからではないかといわれています。

昨今では、遺伝子科学を婚活サービスに活用している企業もあり、男女のHLA遺伝子検査を事前に行って、婚活マッチングに役立てているのだとか。バレンタインシーズンが近づいていますが、婚活中の方は「いいにおいがするなあ」と思う人がいたら、ぜひアタックしてみてはいかがでしょう。

犬とゾウ、どっちの方が鼻が利く?

犬は警察犬や災害救助犬になるほど嗅覚が優れているといわれています。日本警察犬協会のデータによると、例えばニンニクのにおいに対して、犬は人の嗅覚の約2,000倍、スミレの花のにおいに対しては犬が人の約3,000倍、汗などの酸臭に対しては犬が人の約1億倍も優れているのだとか。警察犬が証拠品などから容疑者を見つけたりするのも、汗に含まれる揮発性脂肪酸のにおいを人間よりはるかに鋭く感知できるからだといわれています。健康な犬の鼻は湿っていますが、これは風向きを感知して、においのする方向を定めるのに役立つからなのだそう。年齢や環境にもよりますが、オス犬は発情期のメスのにおいを数kmも離れた場所から気づくようです。

しかし、上には上がいるもので、陸上動物の中で最大級のアフリカゾウは、犬の約2倍も嗅覚が優れているのだとか。東京大学大学院農学生命科学研究科の研究発表によると、においの識別能力を測る嗅覚受容体の遺伝子数は、人が約400個であるのに対して、犬は人の2倍の約800個、アフリカゾウは人の5倍の約2,000個もあるそう。アフリカゾウの鼻はだてに長いわけではなく、嗅覚の能力も動物界でトップクラスなのです。