養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

カロリーとダイエットの雑学

日本のダイエットブームの先駆けとなった出来事とは?体重計を発明した医師の驚くべき実験とは?ダイエットやカロリーにまつわる雑学をご紹介します。

日本のダイエットブームは平安時代から始まった!?

いつの時代も切実な「痩せたい」と思う気持ち。そんな気持ちに応えるダイエット法が時代ごとに流行してきましたが、日本におけるダイエットのルーツはどこにあるのでしょう。

時代は1970年代まで遡ります。1977年に室内ランニング器「ルームランナー」が発売されました。作家の野坂昭如さんが実際にルームランナーを使っているテレビCMのインパクトは絶大で、運動系ダイエット機器の先駆けとして大ヒットを飛ばしました。

さらに遡ること7年、1970年に有名人によるダイエット法の先駆けといえる本が出版されました。歌手の弘田三枝子さんによるダイエット本『絶対やせる ミコのカロリーブック』(出版:集団形星)です。実に150万部を超えるベストセラーとなり、当時はなじみの薄かった「カロリー」という概念が世の中に広まりました。ではなぜ、そこまでのヒットとなったのでしょうか?

カーネーションのイメージ写真

その理由は、1967年の出来事にあるようです。この年、イギリスからひとりの女性が来日しました。名前はツィッギー。当時18歳だった彼女は、身長165cmにして体重41kg。記者会見では、ひざ上30cmのスカートを履き、スリムな脚線美を披露。世界的な流行だったミニスカートが日本の女性をも惹きつけ、「ミニを履くために痩せなきゃ!」という意識が芽生えたのです。ツィッギーは、美しくなるためのダイエットという概念を日本にもたらした“黒船”だったといえるでしょう。

ちなみに、“美しくなるため”という理由ではありませんが、なんと鎌倉時代の説話集『宇治拾遺物語』に、ダイエットにまつわる話が記されています。平安時代の公卿、藤原朝成(あさひら)は、かなりの肥満体で息をするのも苦しいほどだったとか。そこで医者に診てもらったところ、冬は湯漬け、夏は水漬けでごはんを食べるようアドバイスを受けました。しかしどうにも痩せない。再び医者を呼び「効かないじゃないか」と告げ、医師の前で実際の食事をしてみたところ、膳に並んだのはふんだんなおかずと山盛りのご飯。ご飯には水をかけて食べるも、食べ終わると「おかわり」。笑い話として記されていますが、“太り過ぎに悩む”ことは、当時からあったようです。

体重計を発明した医師の、驚くべき実験とは?

さて、次はダイエットに欠かせない体重計のお話。モノの重さを測る「ハカリ」は紀元前5000年頃からあったといわれていますが、人間の重さを測るとなると、話は17世紀頃にまで一気に飛びます。

イタリアの医師だったサントーリオは、体に入れたもの(食事・飲み水)と、体から出たもの(排泄物)の重さと、それに伴う体重の変化を調べようとしました。そこで彼が行ったのは、なんと“実際に大きなハカリの上で生活する”という実験でした。

当時は、1日の食事が計1kgだったとすると、排泄物も1kgだろうと考えられていました。しかし排泄物は800gしかない…さらに、体重も変わっていない。「差引き200gは、どこに消えたのか?」という疑問が浮かび上がります。彼は、「汗のようなものに変わった」と仮説を立て、およそ30年もこの実験を続けたといわれています。この仮説は、現在医学でいうところの「不感蒸泄」、汗や尿のように目に見えるものではなく、呼吸や皮膚から生じる水分蒸発のことを示していました。なにもしなくてもエネルギーが消費され、体重が減る「基礎代謝」もまた、サントーリオの実験なくしては、発見がずいぶんと遅れていたかもしれません。「ハカリの上で暮らすなんて…」と当時は失笑を買ったかもしれませんが、近代医学のルーツとなる、貴重な実験だったわけですね。

その後、ようやく18世紀頃になって、体重計がヨーロッパの街中やサロンなどに設置されはじめます。物珍しさもあって反響を呼んだ体重計は、やがて海を渡って日本へ。明治9年、東京・上野公園の中に自動体重測定器が設置されました。当時は有料で1回2銭。この体重測定器が、日本で初めての“自動販売機”でもあるといわれています。

いまでも、昔の名残なのか、イギリスでは有料の体重計が街中やデパートに設置されています。また、カンボジアなどの街を歩くと、家庭用ヘルスメーターを持参して街角に陣どる「体重測り屋」に出会うこともしばしば。日本人、特に女性が抱きがちな「おおっぴらに体重を知られるなんて恥ずかしい」という感覚は、もしかすると日本特有のものなのかもしれませんね。

1回の咳は、何カロリー消費する!?

今月の特集でもご紹介したように、私達の日常生活すべてにおいて、カロリーを消費しています。ここでは、さまざまな行動の消費カロリーをご紹介してみましょう。

まずはスポーツ。たとえば水泳は、クロールまたはバタフライで泳いだら約290kcal、平泳ぎなら約260kcal、背泳ぎなら約180kcal消費します。激しい運動にみえるボクシングのスパーリングが約230kcal、テニスの試合が約200kcalの消費量ですので、いかに水泳がカロリー消費に適しているかわかるというもの。ちなみにボーリングは、約60kcalです(※いずれも体重55kgの人が30分間行った際の消費カロリーです)。

お次は「入浴」。これも体重55kgの人が30分入浴したとすると、約15kcalの消費となります。30分くらい半身浴していると、入浴前と入浴後では体重が1kgぐらい減っていることもありますが、これは汗によるものです。カロリー消費自体は、そんなに多くありません。

生理現象も、カロリーを消費しています。たとえば「笑う」こと。10~15分間、声を出して笑うと、腹式呼吸によって腹筋などの筋肉が動き、10~40kcalほど消費されるのだとか。10分間続けて笑うのはちょっと苦しいですが、1日であればなんとかなるかもしれませんね。

意外なところでは、咳(せき)。1回の咳で、およそ2kcal消費するといわれています。たった2ckalと思われるかもしれませんが、1分間に2回、ゴホンゴホン!とせき込むペースが1時間続くと、240kcal。4時間続けば1000kcal近いカロリー消費となります。もしかすると、これまで紹介したどの行動よりダイエットに向いている!?いえいえ、病気になって痩せようとするなど、言語道断です。咳が続くような風邪を引いた際には、しっかり栄養を補給するよう心がけてくださいね。