養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

朝の雑学

イギリスに実在した、朝に欠かせない職業とは?朝から飲む(!)ドイツ・バイエルン地方の朝食とは?冬の夜明けは10時…北欧の朝の過ごし方は?世界各地の、朝にまつわる雑学です。

イギリスに実在した“目覚まし屋”、その起こし方とは!?

朝の必需品といえば、枕元に置いた目覚まし時計。毎日お世話になっている人も多いと思いますが、一体いつごろから目覚まし時計は存在するかご存じですか?

その起源は古代ギリシアまで遡ります。古代ギリシアには「クレプシドラ」と呼ばれる水時計がありました。水が少しずつ注がれるように(あるいは、水が少しずつ出ていくように)細工した容器の、水面の高さで時をはかる時計です。これを哲学者のプラトンが応用し、夜に水を注ぎ始めると、朝になって容器から溢れた水によって銅の球がタライの上に落ちて音が鳴る、という仕組みの目覚まし時計に仕立てました。日本庭園でみかける「ししおどし」のような原理ですね。

その後、時計そのものは進化を遂げ、家庭にも普及していきましたが、目覚まし機能はありませんでした。大きな契機になったのは、18世紀から19世紀にかけてイギリスを中心に起こった産業革命です。

各地に大規模な工場が建てられ、大勢の労働者たちは、毎日決まった時刻に工場に出社することを義務付けられました。寝坊しようものなら、遅刻として罰金も取られかねません。でも、目覚まし時計はまだ普及していない…そこで登場したのが「ノッカー・アップ」と呼ばれる職業。いわば“目覚まし屋”です。

では、どうやって起こしていたのか?当時はアパートが多く、すべての階を回ってドアをノックして歩くのは効率があまりよくありません。そこで、竹竿などの長い棒で、窓をコンコンとノック。依頼主が起きて窓を開けるまでひたすらノック。これなら、道路からすべての仕事をこなせます。さらに面白いことに、ゴムのチューブに豆を詰めて、吹き矢の要領でプッと吹いて豆を窓にぶつけるという起こし方もあったそうです。今から考えると、なんとも牧歌的でユニークですよね。

産業革命を陰で支えていた“目覚まし屋”。その後、ロンドンで世界最初の万国博覧会が開かれ、最新鋭の工業製品のひとつとして目覚まし時計が出展されたのは1851年のことです。

朝からソレ!?ドイツの朝の胃袋を満たすのは…

眠っていた体を起こし、一日の活動を支えるエネルギーを摂るために欠かせない朝食。和食ならご飯にアジの干物、海苔、納豆、味噌汁。洋食ならトーストにベーコン、スクランブルエッグ、コーヒーが定番ですが、世界には私達の常識では計り知れない朝食がいくつも存在しています。

まずはドイツ、バイエルン地方。ドイツといえばソーセージが有名ですよね。朝の食卓にも当然のように上りますが、真っ白い「ヴァイスヴルスト」というソーセージが定番です。お湯の入った容器にごろりと入って出てくるヴァイスヴルスト、その皮をナイフとフォークを使って剥いて食べるのですが、その味は一般的なソーセージとは異なり、とてもあっさりしていて日本のハンペンのよう。これに甘いマスタードをつけて食べ、ブレーツェルと呼ばれる塩辛いパンを食べるのがバイエルン風。さらにヴァイスヴルストは傷みやすいため、冷蔵庫が普及していなかった時代は、早朝にお店で購入し、午前中のうちに食べるものと見なされていました。「ヴァイスヴルストに教会の正午の鐘を聞かせてはいけない」ということわざもあるほどです。この習慣が定着して、朝ごはんの定番になったわけですが、驚きなのがこれらのセットと一緒に、朝から「白ビール」も飲むこと。アルコール耐性の強いドイツ人ならではといえますが、社員食堂や大学の学食にも「ヴァイスヴルスト+ブレーツェル+白ビール」のセットが用意されています。

朝食のボリュームも、世界各国では差があります。世界と比較すると日本も多めなほうですが、さらに多いのがイギリス。卵焼きにベーコン、ソーセージ、焼きトマト、野菜のソテー、豆の煮物にトーストに紅茶…そのボリューム満点な朝食は「イングリッシュ・ブレックファスト」と呼ばれ、イギリスの小説家、サマセット・モームは自身の小説の中で「イングランドで美味しい料理を食べようと思うなら、朝食を三回食べることだ」と述べています。逆に朝食のボリュームが少ないのはイタリア。夕食の時間帯が午後10時くらい、午前0時頃にピザを食べることもあるので、朝あまりお腹が空かないのかもしれません。朝起きて口にするのは飲み物だけで、午前10時くらいにパンやカプチーノで遅めの朝食をとります。

一方、アジアに目を移すと、ご飯やお粥などの穀物類や、ベトナムの米麺「フォー」などの麺類が定番の朝食です。この「朝ごはんが麺」という習慣は、実は日本の一部地域にもあることをご存じでしょうか?静岡県藤枝市や福島県喜多方市では、朝からラーメンを食べる文化があり、市内では複数のラーメン屋が早朝から営業しています。両市のラーメンは、あっさりしたスープとのど越しのよい麺を使っているため、朝から食べても胃もたれしにくいといえます。国内外問わず、旅行に出かけた際は、あえてホテルの標準的な朝食ではなく、街に繰り出して“ご当地朝食”を楽しんでみるのも一興ですね。

日が沈まない「白夜」と、太陽が出ない「極夜」。その朝は…

夏至の頃になると、「日が長くなったなぁ」と感じたりするものです。しかし、緯度の高い北欧の夏は、その比ではありません。地域にもよりますが、暗くなるのが午後11時頃で、早朝3時頃にはもう日が昇る…いわゆる“白夜”が訪れます。太陽が地平線下に沈んだとしても、大気の分子や塵などに太陽光が散乱し、夜中でもぼんやりと薄明るい状況となります。

こうなると問題なのが、朝です。今月の特集でも触れたように、人間は太陽光を浴びることによって体が目覚めるため、北欧の夏はカーテンやブラインドが必須となります。しかも厚めの生地のカーテンを使い、太陽光が部屋に入ってこないように遮断します。

それでもやはり早起きしがちになるようで、北欧に住む子ども達の中には、学校に行く前に公園で“ひと遊び”してから出かける子の姿もみられます。大人の中には、仕事の時間を午後3時頃に切り上げて、たっぷりと12時頃まで自由な時間を過ごす方もいるほど。北欧の人びとにとって、白夜が訪れる夏は、ここぞとばかりに遊べる“お祭り”のようです。

一方、冬は午前10時頃に太陽が出て、午後3時にはもう暗くなってしまう“極夜(きょくや)”の季節。北欧の一部地域では、子ども達も懐中電灯を持って登校するほどです。カーテンも、夏とは違って丈も短めで、薄手の生地のものに衣替えします。日本では、夏は薄手、冬は厚手のカーテンを使うことが一般的ですが、北欧では逆なんですね。ちなみに、北欧の家庭のサッシは二重になっていますので、寒い冬でも薄手のカーテンで防寒は問題ありません。

そして、北欧よりもさらに際立った白夜と極夜が訪れる中で暮らす人々もいます。南極の観測隊の方々です。南半球は季節が逆転しますので、いまは冬の盛り。昭和基地のある地域では、5月末から7月上旬にかけて、太陽がまったく姿を見せない極夜が訪れます。

日光を浴びなくなるその間、彼らの中には体調を崩したり、寝つきや寝起きが悪くなる人もいるそうです。担当医師は彼らの体調、さらには気分がふさぎがちになるためメンタルケアにも気を配ります。さらに、なるべく生活のリズムを乱さないよう、朝食は朝8時、夕食は午後6時という規則正しい生活を送っています。

約40日間の極夜が終わり、太陽が顔を出すと、隊員たちは一斉に歓声を上げるそうです。なかなか体験できることではありませんが、きっと初日の出よりも感極まることでしょう。