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日本の食料自給率をアップさせる、ある食材とは?農業の発展に情熱を注いだ詩人は誰?

食料自給率の向上を目指す過程で注目される「米粉」

ご存知の方も多いと思いますが、日本の食料自給率は、先進国の中では最低水準。カロリーベースの食料自給率は年々減少し、平成21年度は40%にとどまっています。お米や野菜などは国内生産でほぼ賄えるものの、大豆や小麦、砂糖などはほぼ輸入に頼っている現状です。

そんな状況下において、先日、農林水産省が2010年の農林業センサス(速報値)を発表。農業就業人口は、前回行われた2005年の調査から比べると、75万人減少した260万人。これには農業以外の収入が主となっている兼業農家の方や、農業法人で働く人などは入っていませんが、減少率は実に22.4%という状況になり、就業者の平均年齢は63.2歳から65.8歳に上昇しています。全国の耕地面積は1.5%の減少にとどまったものの、やはり農業に従事する若い人、その若い人を含めた農家全般をフォローするような仕組みづくりが急務となっています。

消費者の観点からみると、食料自給率をアップさせるためには、国産のものを積極的に消費する「食生活」の確立が望まれています。日本人の主食であるお米の消費量が減少しているため、「ごはん食」を増やすというのもひとつの方法ですが、現在注目を集めているのが「米粉」です。

米粉は、うるち米ともち米を製粉したもので、おせんべいやお団子、大福などの和菓子に使用されています。ビーフンなどの麺も米粉が原料です。ただし、これらの消費だけですと食料自給率のアップにつながらないということで、米粉を使ったパンなどの開発が一部で積極的に行われています。小麦で作る一般的なパンよりも低カロリーで、水分を含む率が高いため、腹持ちも良いのだとか。

小麦粉の代替品として普及が望まれる米粉。美味しくて安価であれば、ぜひとも積極的に活用したいところですよね。

「雨ニモマケズ」の「一日ニ玄米四合」は食べ過ぎ!?

農業は、人間の知恵の積み重ねによって発展してきました。農機具の発展や、水を確保する灌漑用水の技術、不作に陥らない強い品種づくりなど、さまざまな方面で知恵を出し、農業を飛躍的に発展させた偉人がたくさんいます。

皆さんご存じの宮沢賢治も、農業の発展に情熱を注いだ人物のひとり。童話作家や詩人としての印象が強い賢治ですが、そのバックボーンには自然と農業に対する理解と知識がありました。盛岡高等農林学校(現岩手大学農学部)に首席で入学し、稗貫農学校(のちに花巻農学校、現花巻農業高等学校)の教師も努めています。教師を辞めたあとは、若い農業従事者とともに「羅須地人協会」を設立。自ら田畑を耕すかたわら、、科学やエスペラント語、農業技術などを教えていました。農業に従事するあらゆる人々に理解を得られるには至りませんでしたが、無償で大量の肥料設計書を書いたりと、情熱を傾けていました。

ちなみに、宮沢賢治の書いたものの中で最も有名といえる「雨ニモマケズ」の中に、「一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタベ」というくだりがあります。ご存じのとおり、「雨ニモマケズ」は“清貧”でありたいという想いが切々と語られていますが、その中において1日4合というのは食べ過ぎではないか、という疑問がふと持ち上がります。

ただ、「食べ過ぎ」と感じるのは、現在の「おかずたっぷり」の食生活になぞらえて考えているからだといえるでしょう。昔は今のような多種多彩なおかずは食卓に上りません。「日の丸弁当」なども、大量のご飯に梅干しがひとつ・・・というものですよね。人間が必要なエネルギーの大半を、主にご飯や玄米などの穀物から摂取していた時代、つまり、文字通りご飯が「主食」だった時代からすると、「一日ニ玄米四合」は「食べ過ぎ」とはいえないのではないか、といわれています。さらに農業という重労働に就いているなら、なおさらです。

景観の美しさにより再び注目を集める「棚田」

日本は、山と森林が多い国。その環境下で、いかに効率的な農業を行うかが、長年にわたる課題であったともいえます。

現在、平野一帯に田んぼが広がっている景色はさほど珍しくありませんが、平地で田んぼが実現するようになったのは、灌漑技術が発展した近世になってからのこと。田んぼの生命線である「水」は、多少土地が傾斜していたほうが効率よく確保できるため、かつては傾斜地を切り開き、狭い田んぼを段々に連ねる方式がよくとられていました。いわゆる「棚田」「千枚田」と呼ばれるものです。

戦後になってトラクターなどの機械が一般化し始めると、大型機械が導入できないような狭い田んぼがいくつもある棚田よりも、平地で大きな長方形の敷地を田んぼにしたほうが効率よく稲作ができるということで、次第に棚田は減っていきました。

しかしながら現在、棚田が再び注目されるようになっています。農林水産省は「日本の棚田百選」を選定。景観美があり、観光名所やグリーンツーリズムとしての棚田がクローズアップされ始めました。

一見の価値あり!と思える棚田をいくつか紹介しますと、長野県千曲(ちくま)市の姨捨(おばすて)にある棚田。月が出ている夜に畦道を歩くと、それぞれの田んぼに点々と月が写る様子から「田毎(たごと)の月」と呼ばれています。

石川県輪島市の「白米千枚田」は、“海に面した”棚田。紺碧の海と、季節ごとにその表情を変える田んぼの美しさのコントラストは、なかなか他ではお目にかかれません。

高知県津野町の棚田は、田んぼの段差部分が石垣状になっている、全国でも珍しい棚田。今年の10月16日(土)には、貝ノ川地区の棚田、約4ヘクタールに約3500個のキャンドルを灯す「棚田キャンドルまつり」が開かれます。

減反や稲作農家の方の高齢化などに伴い、棚田での農業は年々減少傾向が見られます。いつまでも残したい日本の故郷の風景を、ぜひとも目に焼き付けにいってみませんか?