養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

寒い冬は「半身浴」でゆったり、のんびり

寒さが身に沁みる今の季節、自宅で温かいお風呂に入ると心の底からホッとしますよね。昨今はシャワーで済ます家庭も増えていますが、やはり日本人の元気の源はお風呂です!

以前、当コラムで「温泉」について触れましたが、今回は「お風呂」「入浴」に関する健康雑学をお送りしましょう。

元来、風呂といえば「蒸し風呂」のこと

入浴の歴史を辿ると往々にして、湯に浸かる「風呂」よりも蒸気を使った「蒸し風呂」の文献を多く目にします。そもそも「風呂」という語源も、蒸し風呂に使われた「岩室」の「むろ」が転じて生まれたという説もあります。


古代ローマのように湯に浸かる公衆浴場もありましたが、水道が整備されてない頃ですから水も貴重、さらに燃料も水を沸かすよりも蒸気を発生させたほうが安価で済む、ということも「蒸し風呂」が繁栄した理由のひとつでしょう。また、アフリカなどの熱帯地域では現在でも「水浴」が中心。祈祷や温熱治療として蒸し風呂を利用することがあります。


祈祷や宗教は風呂のルーツと密接に絡み合っています。ネイティブ・アメリカンの社会では、密閉したテントの室内中央に焼いた石を置き、熱気で自らを恍惚状態にして祈りを捧げる「スエット・ロッジ」という風習があります。日本においても8世紀頃から、身体を清める「沐浴」を僧侶達が行っていました。のちにお寺は「施浴」と称して近隣の住民にも風呂を開放しています。


その後、宗教的な意味合いが自然と薄れていきます。ただ、一般市民が清潔さを保つための手段は、もっぱら「行水」でした。江戸中期頃になってやっと、銭湯で「湯に浸かる」行為が一般的になったのです。「清潔さ」のみならず、「気持ちよさ」を求めはじめたのも、この頃といえるでしょう。ちなみに明治時代に入るまで、日本の銭湯は男女混浴でした。


今では、「清潔さ」「気持ちよさ」の他に、ジェットバスなどの水圧がマッサージと同様の効果をもたらしたり、浮力を得ることによって心身をリラックスさせる効果なども注目されていますが、科学的な検証によって「好ましい入浴法」があることもポピュラーになってきました。


肩まで身体を浸す「全身浴」は、静脈が圧迫されて心臓に負担がかかります。また、熱いお湯に浸かると急激に血管が収縮して血圧が上昇し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。さらに熱さゆえ、長々とは入れません。身体の「芯」まで届かずに表面だけ暖まるため、「湯冷め」しやすいのです。


そこでもてはやされているのが、ぬるめのお湯にみぞおちから下だけを浸す「半身浴」です。人にもよりますが、38度~40度くらいのお湯に20分~30分程度浸かることが良いとされています。心臓に負担がかからずに血行が良くなり、足のむくみをとって冷え性の予防にもなります。熱い湯と違って長時間入れるため「湯冷め」しにくくなりますし、新陳代謝も活発化。副交感神経の働きも強まって、精神的にリラックスすることができるのです。


必要に応じて、ミネラルウォーターなどのペットボトルを持ち込んで水分補給してもよいでしょう。また、「寒い」と「温かい」を急激に繰り返すと、血圧の高い方は脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。いわゆる「ヒートショック」と呼ばれるものです。シャワー文化の欧米は、日本に比べてヒートショックの事故例が極めて少なくなっています。浴室や脱衣所を温かくしておくように心がけてください。冬場は特に注意が必要です。十分に気を配って、快適な入浴ライフを送りましょう!