養命酒ライフスタイルマガジン

健康の雑学

「第二の心臓」を満足させる「靴」とは?

東京の街は、すっかり春めいてきました。いわゆる「散歩日和」も多く、ポカポカと暖かい日にはついつい散歩したくなるものです。

さて、歩くとなれば当然履くのは「靴」。皆さんは、靴にどれだけ気を配っていますか?足は「第二の心臓」といわれるほど、心身の健康と密接に結びついた部位です。その足を覆っている靴は有史以来、ファッションと機能、その両面が洗練されてきました。

今回の健康雑学は「靴」に注目してみましょう。

血の巡りが悪い足は万病のもと

人類が始めて「靴」を履いたのはいつ頃なのか?それは今なお、未知のベールに包まれています。現存している靴で最古のものは、古代エジプトで発掘された靴です。それは今でいうところの「サンダル」。紀元前のツタンカーメン王のミイラは、金箔の施されたサンダルを履いていました。


一方、日本に残存しているものでは、邪馬台国時代のものといわれる「田下駄」です。水田での農耕中に足が泥に沈むのを防ぐために履く「板」といったほうがよさそうです。原始的なものには鼻緒がなく、縄で板と足の甲を縛りつけて装着していました。


王様や神官など位の高い人物がステータスを示すために履くケースと、田下駄のように「道具」としての必要に迫られて履くケース、両方が古代から存在していたことになります。それが時を経るとともに、民間人も「履物」を履くようになっていったのです。


当初、民間人にとって靴の存在理由は「異物を踏んで怪我をしないため」と、「汚れないため」という二点が主でした。面白いのは、「排泄物」対策として重宝した履物が世界にあることです。日本でいえば、排便時に足元を汚さないために高下駄を履く風習もありました。下水道の発達していなかった頃の欧州では、街中に溢れる糞尿でスカートのすそが汚れないよう、かかとを高くした靴が生まれました。ご存知「ハイヒール」の誕生です。


その後ハイヒールは、女性の脚線美を際立たせる、いわば「ファッション」の側面からもてはやされるようになりました。しかし、絢爛さを競うような欧州の女性たちの衣服や、彼女達の腰を締め付けていた「コルセット」が、20世紀に入ってまもなく廃れ始めます。要は、ファッションばかり追及するのではなく、もっと快適に過ごすための機能が、身につけるものに求められるようになったのです。靴にも同じことが当てはまります。「履き心地」のよい靴を履きたいと人々が思うようになったのです。その後、靴は改良を重ね、丈夫さを保つとともに快適で、健康に良い靴が生まれるようになりました。


靴の改良もさることながら、現在においてもっとも大切なことは「自分に合った靴」を履くことです。いくら「良い」とされる靴であっても、自分の足にフィットしていなければ元も子もありません。実際に「きつい靴」や「ゆるい靴」を履いていると、外反母趾や爪の病気、たこやウオノメといった足の障害が生じます。それにとどまらず、抹消血管において血液のめぐりが悪くなり、さまざまな病気の引き金になることもあります。足をかばうことから歩き方、ひいては姿勢の悪さにもつながりますし、足の裏が過度に発汗して蒸れやにおいが発生し、水虫の原因にもなります。腰痛や生理不順、集中力の低下につながることもあり、「合わない靴」はまさに百害あって一利なしといえるでしょう。


靴を選ぶ際には、かかとや土踏まずに違和感はないか、捨て寸(つま先部にある余裕)は1~3センチ内をキープしているかなど、しっかり吟味するようにしましょう。一度、専門店などで自らの足を知るために、足の指の付け根部分の周囲(足囲)の長さや、足の指の先端部とかかとの間(足長)を図ってみてもよいと思います。その寸法を知った上で靴を買いにいく。専門店であれば靴合せの専門家「シューフィッター」がいる場合もあるので、しっかりとあつらえてもらう。毎回専門店に出向くのは面倒だ、といった人でも、一度専門家があつらえた靴の「履き心地」を肌で感じ取れば、その感触を基準にして次回の購入に活かせるようになるでしょう。