養命酒ライフスタイルマガジン

研究員のウンチク

寒さから身を守るホットドリンク

寒い季節には世界の国々それぞれのお国柄に応じた飲み物があります。たとえば、

グリューワイン

ドイツ、フランスなど

アイリッシュ・コーヒー

アイルランドで考案された飲み物ですが、アメリカでもよく飲まれているそうです

紅茶

イギリス

ロシアンティー

ロシア

クズ湯・卵酒・甘酒

日本

ホットチョコレート

ヨーロッパ全域

これらの飲み物には、ワイン、アイリッシュウイスキー、日本酒などのアルコールやシナモン、クローブ、ショウガなどカラダを温める作用のあるスパイスが用いられ、薬膳における性味(性:寒涼温熱+平性で示され、摂取するとカラダを温めたり冷やしたりする性質をあらわす。味:酸苦甘辛鹹の五味で示され味により効能が異なる) がうまく組み合わされています。欧米では中国のように薬膳という系統立った概念こそありませんが、寒さから身を守る必要性こそ発明の母、というところでしょうか。

また飲み物に添えられる砂糖、ジャム、ハチミツなどの甘味については、次のようなことから寒さ対策に役立っているのでは?と考えられます。

1981年にトロント大学(カナダ)のジェンキンス博士らが提唱した GI(Glycemic Index:グリセミック・インデックス)は、食品が体内で糖に変化する早さをブドウ糖を100とした場合の相対的な値として表示されます。糖分は吸収が早いため血糖値が上がりやすいのですが、エネルギーに変換されるのが早いということなので寒い時の体熱産生にとっては有利です。ここに食事誘発性体熱産生(DIT:Diet-induced thermo-genesis)が高くかつ血流を促進する作用があるアルコールを組み合わせると、産生された体熱が末梢まで届きやすくなることが推測されます。

またタンパク質はDITが20~40%と、糖質の5%、脂質の4%に比べて高く体温を維持するのに有利です。寒い地域に暮らすイヌイットの人々の伝統的な食事では、サケやアザラシなどの海産物やカリブーなどの生肉からたんぱく質を摂取するのが食事の中心であったのはこうしたことも関係しているかもしれませんね。もちろん冷たい物よりは温かい物の方がDIT反応は高くなります。日本家屋はもともと寒い季節より暑い季節を過ごすのに適しているため、卵を入れた卵酒も、今ほど暖房設備に恵まれない時代に生きた日本人の知恵でしょうか。

白鳥 奈緒美(養命酒中央研究所・基盤研究グループ 主任研究員)