養命酒ライフスタイルマガジン

研究員のウンチク

夏バテに有効な漢方処方

夏バテに悩まれている方へ

毎年夏バテに悩まれている方は、梅雨明けのこの頃から夏バテ対策に苦慮したりします。夏バテは全身に疲れを感じ食欲も無く、日常生活にまで支障をきたすなど悩みのたねです。しかし病院で検査を受けても異常がみられない場合があり、その場合には病気として扱ってもらえず、治療といってもビタミン剤や精神安定剤の投与や精神療法であったりします。そこで夏バテに効果が見られた漢方処方についてご紹介します。


清暑益気湯構成生薬と薬研(やげん)

厚生労働省が中心となって基準をつくった漢方210処方の効能・効果から、夏特有の症状に関係する文言を抜き出すと、「暑さによる食欲不振」、「暑気あたり」、「夏やせ」などがあります。処方では、「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」、「五苓散(ごれいさん)」、「柴苓湯(さいれいとう)」、「四苓湯(しれいとう)」、「胃苓湯(いれいとう)」などが該当しますが、この中でも「清暑益気湯」は名前からして夏バテに効きそうです。
「清暑益気湯」は古くは15味(生薬)の処方でしたが、即効性を考慮して現在の9味の処方が広く用いられるようになりました。構成生薬は、人参(にんじん)、朮(じゅつ)(白朮・びゃくじゅつ,蒼朮・そうじゅつ)、麦門冬(ばくもんどう)、当帰(とうき)、黄耆(おうぎ)、陳皮(ちんぴ)、五味子(ごみし)、黄柏(おうばく)、甘草(かんぞう)の9味です。


漢方煎じ用土瓶と最近の漢方煎じ器

夏バテが病気として認識されない場合が多いためか、この処方に関する学術的な報告は、少ないのですが、その中に著効がみられたという報告を見つけました。
71歳の女性の方で、若いころから夏場になるときまって倦怠感や食欲不振となって、体重減少があり、日常生活にも障害がみられた方で、これまでは「病気ではないから病院にいってもしかたがない」とあきらめていたそうです。その方が「清暑益気湯」を7月から飲み始めたところ、8月になっても例年の夏バテの症状が出ず、食欲も良好であったそうです。

この症例報告には後日談がありまして、この患者さんは冬までこの処方を服用することを希望されたためにそれに応じたところ、なんと寒がり、冷え性(冷え症)まで改善されたそうです。永年にわたり悩まされてきた暑さに対する症状が改善されただけでなく、さらに寒さに対する症状まで改善されたというおまけ付きです。漢方では「証」が合えば異なる症状や異なる病気にも効果があるといわれますが、まさにその例ではないかと思われます。症例報告を書かれた医師は、「清暑益気湯」は夏バテの自覚症状を取り、QOL向上をもたらすことが期待でき、一度は投与を試みる価値があると思われる」としめくくっておられるように、夏バテに悩んでおられる方は、参考にされたらいかがでしょうか?

丸山 徹也(養命酒中央研究所・主任研究員)