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  • 【2019年3月号】 季節の変わり目の不調に ほかほかペットボトルでお灸!

季節の変わり目の不調に ほかほかペットボトルでお灸!

季節の変わり目の春先は、花粉症や冷えをはじめ、疲労や胃腸トラブルなど、体調不良が起こりやすい時期です。そこで今月は、人気鍼灸師の若林理砂先生に、さまざまな不調に役立つお灸が簡単にできる「ペットボトル温灸」の方法を教えていただきます。

若林 理砂(わかばやし りさ)先生
お話を伺った先生
臨床家・鍼灸師 アシル治療室院長
若林 理砂(わかばやし りさ)先生

臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年に東京・目黒にアシル治療室を開院。現在、新規患者の受け付けができないほどの人気治療室となっている。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラ。『夏冷えにサヨナラ! ペットボトル温灸術』にてNHKまる得マガジンに出演。近著に『決定版 からだの教養12ヵ月』『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話 「寝る・食う・動く」を整える』がある。
mailmagazine:http://yakan-hiko.com/wakabayashi.html
twitter:http://twitter.com/#!/asilliza/

春先はどうして身体に不調が起こりやすいの?

春先は気温差が大きいので、自律神経の働きが不安定になりがちです。東洋医学では、春先は身体の上部に気(生命活動のエネルギー)がのぼってしまうと考えられています。そのため、花粉症などのアレルギーや、のぼせ、胃もたれ、ガス腹、便秘や下痢、吹き出物、乾燥肌などの症状が出やすくなります。

不調のセルフケアに「ペットボトル温灸」がいいって本当?

昔の人は、不調が出た時に鍼(はり)やお灸で治療していました。鍼灸治療のうち、鍼は専門技術が必要ですが、お灸は自宅でできる健康維持の手段として広く活用されてきました。ただ、もぐさをひねって線香で点火するお灸は、火や煙が発生しますし、ツボにピンポイントで当てなければならないという難しさがあります。しかし、ここで紹介する「ペットボトル温灸」は、火を使わず、ツボ付近を広く温灸でき、ひとつのツボを刺激するのにかかる時間も1分前後なので、誰でも簡単に試すことができます。

簡単!ペットボトル温灸の方法

1. ホットドリンク用のペットボトルを用意!

ホットドリンク用(目安はキャップがオレンジ色、またはHOT&COLDと書かれたもの)のペットボトル(容量350ml~500ml)を1本ご用意ください。

  • 非耐熱性のコールドドリンク用ペットボトルは熱で溶けるのでNG。
  • 金属のボトル缶は熱伝導率が高く、肌に当てた時に熱すぎるのでNG。

2. 「水1:湯2」の割合でペットボトル温灸の適温に

まず、空のペットボトルの3分の1に常温の水を入れ、次に沸騰する直前の湯(大きな泡が立つ前の湯)を3分の2注いだら、フタをしっかり閉めます。これでペットボトル内の温度は温灸に適した60~70度になり、20~30分ほどなら湯温も適温のままです。「水1:湯2」の割合は目分量でかまいませんが、正確に測りたい方は耐熱性の計量容器に常温の水100mlと沸騰直前の湯200mlを混ぜてからペットボトルに注いでください。

  • 先に熱湯を注ぐとペットボトルが変形するので、必ず水を先に入れます。湯を注ぐ時は火傷しないように手指を添えず、流しなどに置いて静かに注いでください。
  • 自動販売機などのホットドリンクは温度がやや低めなので、温灸にはあまり適していません。

3. ツボ付近の地肌に当て、熱いとなったらすぐ離す

ペットボトルを持つ手が熱いとならないように、フタの方を持ちます。ペットボトルをツボに当てる際は、衣服の上からではなく、肌に直接当てないと適切な効果が得られません。ツボの位置が正確にわからなくても、ペットボトルの側面や底面を利用して、ツボ付近に力を入れずに軽く当てればOKです。ペットボトルを肌に当てて「アチッ」と感じたら、すぐに肌から離してください。調子が悪い場所のツボを温灸すると、なかなか熱いと感じにくい場合があります。ツボ付近に当てる回数は3~4回が目安ですが、肌がピンク色になれば効いているサインなので、そこでストップしてください。

  • ペットボトルを押し当てる時間や、当てる回数が多いほど効果が高まるわけではありません。火傷の恐れがあるので、熱いと感じたら我慢せず、速やかにペットボトルを肌から離してください。

春先に起きがちな不調別
ペットボトル温灸ポイント7選!

春先に起こりやすい7タイプの不調別にペットボトル温灸のコツをご紹介します。

写真では衣服の上から当てていますが、実際は地肌に直接当ててください。

1. 花粉症で鼻水が止まらない人はココを温灸!

「花粉症で鼻水が滝のように…」「春先に鼻風邪をひいた…」そんな人におすすめ!

中指を軽く曲げて頭に触れる所にあるツボ「上星(じょうせい)」の写真
ツボ「上星(じょうせい)」付近にペットボトルを当てている写真

手のひらの付け根を鼻先に当て、中指を軽く曲げて頭に触れる所にあるツボ「上星(じょうせい)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。

2. 春なのにやる気が出ない人はココを温灸!

「年度はじめでがんばらなきゃいけないのに、ぼーっとして元気が出ない…」そんな人におすすめ!

おへそから恥骨結合を結ぶラインの上から下にペットボトルの底面を当てている写真

おへそから恥骨結合(左右の恥骨が結合する所)を結ぶラインの上から下へ、何回かに分けてペットボトルの底面を当て、熱いと感じたら離します。

左右の肩甲骨の間をペットボトルで叩く写真

左右の肩甲骨の間をペットボトルで軽く叩くようにトントンと当てます。左右同じように行います。

ツボ「太白(たいはく)」付近にペットボトルを当てる写真

足の親指下のくぼみにあるツボ「太白(たいはく)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。左右同じように行います。

左右の耳の1番上に親指を当て、両手の中指が出会う所にあるツボ「百会(ひゃくえ)」の写真
ツボ「百会(ひゃくえ)」にペットボトルを当てている写真

左右の耳の1番上に親指を当て、両手の中指が出会う所にあるツボ「百会(ひゃくえ)」にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。髪の毛があると、熱さを感じにくいので、できれば髪を分けてペットボトルが頭皮に直接触れるようにしましょう。

3. 春先の寒暖差でお疲れ気味の人はココを温灸!

「季節の変わり目は気温差が激しくてぐったり…」そんな人におすすめ!

ツボ「腎兪(じんゆ)」付近にペットボトルの側面を当てている写真1
ツボ「腎兪(じんゆ)」付近にペットボトルの側面を当てている写真2

ウエストの高さで、背骨より指2~3本左右にあるツボ「腎兪(じんゆ)」付近にペットボトルの側面を当て、熱いと感じたら離します。手を持ち替えて左右同じように行います。

尾てい骨の一番高い部分に中指で触れた時、手のひらが当たるゾーン「仙骨部」の写真
「仙骨部」にペットボトルをタテにして押し当てている写真

尾てい骨の一番高い部分に中指で触れた時、手のひらが当たるゾーンが「仙骨部」です。このあたりにペットボトルをタテにして押し当て、熱いと感じたら離します。

寝転がってペットボトルの側面が仙骨部に当てている写真

慣れてきたら、寝転がってペットボトルの側面が仙骨部に当たるように置き、熱いと感じたら身体を離すようにしてもOK。

肋骨が合わさった所とおへその中間にあるツボ「中脘(ちゅうかん)」の写真
ツボ「中脘(ちゅうかん)」に、ペットボトルの底面を当てている写真

肋骨が合わさった所とおへその中間にあるツボ「中脘(ちゅうかん)」に、ペットボトルの底面を当て、熱いと感じたら離します。

4. 足が冷えたりむくんだりする人はココを温灸!

「春先に薄着して足が冷えた…」「夕方になると足がむくんで靴がキツい…」そんな人におすすめ!

ツボ「失眠(しつみん)」付近にペットボトルを当てている写真

かかとの真ん中のツボ「失眠(しつみん)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。かかとは感覚が鈍いので、熱いと感じるまで少し時間がかかります。冷えやむくみがひどい人は、左右とも5秒×10回ほど繰り返しましょう。

ツボ「湧泉(ゆうせん)」付近にペットボトルを当てている写真

足を握った時、一番くぼむツボ「湧泉(ゆうせん)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。左右同じように行います。

ペットボトルを床や布団に寝かせて置き、足裏を軽く押し当てている写真

慣れてきたら、ペットボトルを床や布団に寝かせて置き、足裏を軽く押し当てて、失眠や湧泉を刺激してもOK。「失眠」と「湧泉」は不眠緩和にも役立つツボなので、夜寝る前に行えば、冷えやむくみが緩和して快眠にもつながります!

5. 風邪っぽい人はココを温灸!

「風邪のひきはじめかなぁ…」「風邪がひどくなる前になんとかしたいなぁ…」そんな人におすすめ!

ツボ「孔最(こうさい)」付近にペットボトルを当てている写真

肘の内側の腱の外側のへこんだ所と、手首の脈を測る所を結んだ中間にあるツボ「孔最(こうさい)」は、風邪のひきはじめの時に押すとジーンと痛みを感じます。このあたりにペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。手を持ち替えて左右同じように行います。

ツボ「大椎(だいつい)」付近にペットボトルを当てている写真

首を前に倒した時、一番飛び出た骨の下にあるツボ「大椎(だいつい)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。ここを温灸するだけで、じわっと汗ばんでくる場合もあります。

ツボ「肩中兪(けんちゅうゆ)」付近にペットボトルを当てている写真

「大椎」の指3本分外側(左右)にあるツボ「肩中兪(けんちゅうゆ)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。手を持ち替えて左右同じように行います。

6. 胃腸の調子がよくない人はココを温灸!

「花見で暴飲暴食して胃腸がつらい…」「花冷えでちょっと消化不良…」そんな人におすすめ!

ツボ「足三里(あしさんり)」付近にペットボトルの側面を押し当てている写真

ひざのお皿の外側にあるくぼみから指4本分下のツボ「足三里(あしさんり)」付近にペットボトルの側面を押し当て、熱いと感じたら離します。胃腸を整えることで身体全体が整うため、足三里は古来より活用されてきた万能ツボです。江戸前期の俳諧師・松尾芭蕉の『奥の細道』にも足三里が出てきます。

肩甲骨の下からウエストライン近くまでのゾーンにあるツボ「胃の六つ灸(むつきゅう)」の写真
ツボ「胃の六つ灸(むつきゅう)」付近にペットボトルを上から順に押し当てている写真1
ツボ「胃の六つ灸(むつきゅう)」付近にペットボトルを上から順に押し当てている写真2
ツボ「胃の六つ灸(むつきゅう)」付近にペットボトルを上から順に押し当てている写真3

肩甲骨の下からウエストライン近くまでのゾーンにあるツボ「胃の六つ灸(むつきゅう)」付近にペットボトルを上から順に押し当て、熱いと感じたら離します。手を持ち替えて左右同じように行います。

7. 肩がガチガチな人はココを温灸!

「肌寒いと縮こまって肩がこる…」「デスクワークが多くて肩がガチガチ…」そんな人におすすめ!

ツボ「合谷(ごうこく)」付近にペットボトルを当てている写真

手の水かきの人差し指の骨の際にあるツボ「合谷(ごうこく)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。手を持ち替えて左右同じように行います。

ツボ「手三里(てさんり)」付近にペットボトルを当てている写真

肘を曲げた時にできるしわから指3本分手首方向にあり、筋肉が1番盛り上がっている所にあるツボ「手三里(てさんり)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。

ツボ「肩井(けんせい)」付近にペットボトルを当てている写真

首を前に倒して1番飛び出た骨の下と肩先の中間(左右)にあるツボ「肩井(けんせい)」付近にペットボトルを当て、熱いと感じたら離します。左右同じように行います。

ペットボトルとお湯があれば即実行できる「ペットボトル温灸」は、ツボ付近を狙えば誰でも簡単にできるのがポイント。春先に不調を感じたら、ぜひお試しを!効果は個人差があるので、まずは体感してみてください。

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