養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 48
真っ赤な実に抗酸化成分がたっぷり「山査子(サンザシ)」

今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「山査子(サンザシ)」をピックアップしました。

「希望」という花言葉を持つ聖なる植物

実をつけたサンザシ
実をつけたサンザシ

サンザシは中国原産の植物で、シベリア、朝鮮半島にも分布しています。日本には江戸時代中期にもたらされたといわれています。3000年近い栽培の歴史があり、古くから民間薬、食用として重宝されてきました。日本には江戸時代中期にもたらされたといわれています。
キリストが処刑された時に着けていたイバラの冠は、西洋サンザシの小枝だったそうです。西洋サンザシは英名で「メイフラワー(May flower)」といいます。英語のMayは5月のことですが、その名の通り5月頃に白や桃紅色のかわいらしい花をつけます。ちなみに、イギリスの清教徒が信仰の自由を求めてアメリカに渡った時に乗っていた船の名を「メイフラワー号」といいます。その船尾にサンザシの花が描かれていたそうです。サンザシの花言葉は「希望」ですが、まさに清教徒たちの希望を乗せた船出だったのでしょう。

サンザシは8~10月に真っ赤な実がつきます。甘酸っぱい味のため、中国ではサンザシ酒、サンザシジュース、お菓子やドライフルーツなどにされることが多いようです。中国の北部では、竹串に挿したサンザシを飴で覆った「氷糖葫蘆(ピンタンフーロー)」というリンゴ飴のようなお菓子が街角でよく売られています。

生薬のサンザシ(山査子)
生薬のサンザシ(山査子)

バラ科のサンザシやオオミサンザシの成熟した果実を乾燥したものが、古くから生薬として用いられています。
薬効としては、消化不良を改善して胃腸を元気にするとされ、特に肉類の消化を助けるといわれています。また、血液の滞りを改善するとされていることから、民間薬として女性の月経痛、産後の腰痛改善に用いられたり、冷たいものを摂りすぎてお腹を壊した時にサンザシを炭にしたものが下痢止めとして用いられてきました。
成分としては、クエルセチン(フラボノイド)、コーヒーにも入っているクロロゲン酸(フェノール類)、美肌成分のウルソール酸(トリテルペノイド)などが確認されており、消化酵素も含んでいます。抗酸化作用が期待されるので、美容にもよいかもしれません。