養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 45
目にも鮮やかな生薬「菊花(キクカ)」

今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「菊花(キクカ)」をピックアップしました。

疲れ目やかすみ目にも一役

菊は「菊酒」に用いられるなど、薬用植物として古くから使用されてきました。大菊や菊人形といった観賞用として発展したのは江戸時代の前期以降で、仕立てなどの鑑賞方法もこの時期に発達しました。菊の中でも味や香りの良い品種は、食用菊として利用されています。

食用菊でなじみのある菊の花(左)と菊花(生薬・右)
食用菊でなじみのある菊の花(左)と菊花(生薬・右)

生薬としての菊は、花の部分を乾燥させて用いるのが一般的で、目の疲れや熱を取るのに用いられます。東洋医学では、視力減退や目のかすみに適用される「杞菊地黄丸(コギクジオウガン)」という処方などに用いられています。健康食品の分野では、ブルーベリーやメグスリノキなどと一緒に配合して、パソコンやスマートフォンなどよく利用する人向けのサプリメントに利用されています。

中国伝来の「重陽の節句(ちょうようのせっく)」は、菊の咲く旧暦の9月に行われることから「菊の節句」とも呼ばれます。これは「人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)」と呼ばれる「五節句」の1つです。
陰陽五行説では、奇数は陽の数とされており、奇数の中で最大の数である9が重なるという意味で「重陽」と呼ばれるようになりました。重陽の節句には菊の花を飾って菊酒をいただいたり、菊に綿をかぶせ、花の香りと花露をしみこませた綿で身を清めるなど、さまざまな行事が行われてきました。(*旧暦の五節句は新暦にもリンクしており、それぞれ七草粥、ひな祭り、子どもの日、七夕祭りといったイベントと符合していますが、9月9日だけは新暦にその名残が見られません)。

50円硬貨の菊のデザイン
50円硬貨の菊のデザイン

菊は昔から紋様とも深い関わりがあり、鎌倉時代に後鳥羽上皇が好んで菊の意匠を用いたことから、皇室の紋として、また日本を象徴する花として菊が用いられるようになりました。その後も武家や公家の家紋として用いられ、現代でも日本国を代表する花としてパスポートや勲章、50円玉などに菊の意匠があしらわれています。