養命酒ライフスタイルマガジン

生薬ものしり事典

生薬ものしり辞典 37
紅い染料でおなじみの「紅花(コウカ)」

今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「紅花(コウカ)」をピックアップしました。

血行促進や婦人病に使われる生薬

生薬 紅花(コウカ)の基原植物であるベニバナは、エジプトや中近東辺りが原産地です。日本には飛鳥時代(6世紀頃)にシルクロードを経て、染色技術や栽培方法とともに伝来しました。
日本国内での栽培は東北地方が有名で、7月上旬頃からベニバナの花が咲き始めます。
ベニバナにはいくつかの品種がありますが、アザミに似た花を咲かせる「最上(モガミ)ベニバナ」が特に有名です。花の咲き始めは鮮やかな黄色ですが、開花の最盛期を過ぎた頃から徐々に赤色に変化します。最上ベニバナの総苞片(そうほうへん)にあるトゲはとても鋭く硬いため、花弁の収穫は朝露でまだトゲが柔らかい早朝のうちに行われます。

最上ベニバナの花と総苞片
最上ベニバナの花と総苞片

最上ベニバナの全景
最上ベニバナの全景

トゲナシベニバナの花
トゲナシベニバナの花

過去に弊社で栽培した中国のベニバナの中には、咲き始めから花弁の色の赤味が強く、開花の最盛期には鮮やかな朱色を呈する品種がありました。赤色の成分であるカーサミンを最上ベニバナの1.5倍ほど多く含んでおり、花弁が長く、総苞片が少しねじれ、トゲも比較的少ないといったユニークな形質を持っていました。

中国のベニバナの花
中国のベニバナの花

この品種がシルクロードを経て古の日本に伝わり、栽培が広まっていたら、現在のベニバナのイメージもずいぶん違っていたかもしれません。近年はトゲの無い品種も栽培されていますが、ベニバナといえば「トゲ」のイメージが強いため、トゲの無い品種に物足りなさを感じる人も多いようです。

国内のベニバナは、主に化粧の紅や、染色用に栽培されてきました。花弁には水溶性の黄色の色素と、水に溶けにくい赤色の色素が含まれており、水の中で揉むと黄色の色素だけが溶け出し、赤色の色素だけが残ります。残った赤色の色素は、布類などの紅花染めに利用されてきました。
ベニバナの花弁を乾燥させたものは、「紅花(コウカ)」と呼ばれ、血行を促進し、鬱血を除く漢方薬として用いられています。また、婦人病特有の血行障害による生理痛や、産後の腹痛などに効果があるといわれています。ただし妊娠中の方は注意が必要です。
紅花の種子からはリノール酸を含むサフラワー油がとれ、サラダ油、マーガリン等の食用油として使われています。サフラワー油は血管壁についたコレステロールを除く働きや、高血圧予防に効果があるとされています。最近では、ベニバナの種子に含まれるポリフェノール成分に血管年齢の改善効果があることも明らかになっています。

生薬「紅花(コウカ)」

紅花は薬局や健康食品の販売店などで比較的簡単に入手できます。紅花1~2gにお湯180mlを注げば、「紅花茶」が楽しめます。また、紅花50~60gに焼酎1.8Lと氷砂糖500gを入れ、2~3ヶ月間冷暗所で寝かせた後にろ過すれば「紅花酒」が完成します。「紅花酒」はロックや水割りはもちろん、炭酸水やレモンを入れたり、お好みでハチミツなどを加えても美味しくいただけます。(※紅花茶は1日1杯、紅花酒は1日大さじ1杯程度を目安に、ご自宅用としてお楽しみください。妊娠中の方は摂取をお控えください。)

紅花茶