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実践!東洋医学の養生法

睡眠 体を温め質のよい眠りを

睡眠は「気」を補う養生です。睡眠がうまくとれていないと「気」を補うことができず、体は次第に「虚」へと傾いていきます。人によって必要な睡眠時間は異なりますが、一般的には、なるべく午前0時前に寝床に入り、最低でも6時間は寝るのがよいとされています。冬は寒さにより夏よりも多くエネルギーを使うので、他の季節よりも少し早く眠り、少し遅く起きるようにしましょう。ただし、長ければ長いほどよいというものでもなく、ほどほどが大切。「十分に休息できた」という感覚を大切にしながら、季節ごとに自分に適した睡眠時間を見つけてください。また、冷えがあると寝つきにくくなり、眠りの質も低下します。体の表面が温まり、手足がポカポカして手足から熱が放散されると深部の体温が下がります。これがスイッチとなり、眠気は起こります。寝る前に38〜40℃のぬるめの湯に浸かるなど体を温め、ぐっすりとよい睡眠を得ましょう。

冬は少し早く寝て、少し遅く起きるようにする。「十分に休息できた」と感じることが大切。
体が冷えた状態では寝つきが悪く、眠りが浅いため十分に「気」を補うことができない。
体が温まるとリラックスしてぐっすりと眠ることができる。質のよい睡眠により、「気」を補うことができる。

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食事 内側から「温め」「気」を「補う」食養生

食養生によって体を内側から温め、「気」を補いましょう。食養生の基本は、旬の食材をバランスよくとることです。旬の食材には季節の変化に心身が順応する効果が期待できるため、食養生の方法として理にかなっています。中でも体を温め、「先天の気」にかかわる「腎」や「後天の気」にかかわる「脾」の働きを「補う」食材を上手に取り入れるとよいでしょう(下図参照)。その他、「夕食は寝る3時間以上前にすます」「食べる量は腹八分目」といったことも食養生の大切なポイントです。

腹八分目が健康の秘訣。冬は忘年会や新年会など、何かと胃腸を酷使する季節。暴飲暴食に気をつけよう。

体を「温め」、「腎」や「脾」の働きを「補う」食材(例)

先天の気・腎/くるみ、マッシュルーム、イトヨリ、エビ、黄ニラ、うど/後天の気・脾/ にんにくの芽、生姜、かぼちゃ、ねぎ、赤米、もち、いんげん豆、マグロ、サケ/くり、タイ、イワシ、黒米

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運動 冬は“ほどほど”の運動で体を温めよう

運動をして汗をかくと「気」の巡りがよくなり、体内の老廃物を排泄する効果もあります。ただし、冬は「蔵」する(活動を避け、蓄える)季節。汗をたくさんかくような活発な活動によるエネルギー消耗を避け、蓄えることを第一にゆっくり過ごすようにしましょう。とはいえ、何もせずにじっとしていると冷えはひどくなりますので、ストレッチや軽いウォーキングなど、ほどほどの運動で体を温めることをおすすめします。

コラム

「温補」に効果的なセルフケア

ツボ押し

ツボ押しは簡単にできる「温補」ケア。ツボの場所は目安です。押してみて痛気持ちいい場所を見つけましょう。

温 冷えに三陰交 内くるぶしの頂点から指4 本分上を親指の腹で押す。
補 疲れ、だるさに湧泉 足の指を曲げた時にできるくぼみの真ん中を親指の腹で押す。

足湯

「足湯」によって、足先の血行がよくなり、リラックスすることができます。寝る前の足湯は寝つきをよくします。

バケツにふくらはぎ(または足首)が浸かる程度の40 ~ 42℃の湯をはり、10 分間足を入れる。

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薬酒 薬酒は「温補薬」です。上手に活用しましょう

古くから先人たちは「生薬(しょうやく)」をお酒に浸けて、「薬酒(やくしゅ)」にして服用していました。生薬とは植物をはじめ、動物や鉱物などの天然産物由来の薬物のことで、乾燥させるなどして薬として用いられます。生薬はお酒に浸けて薬酒にすることで、水では抽出されない薬効成分が自然に近い状態で浸出されます。さらに、その薬効成分は血行を促すアルコールの作用と協力し合い、効率よく全身に行きわたって、体内に吸収されます。薬酒に使われる生薬には「温める(温法)」「補う(補法)」作用のあるものが多く、またお酒自体にも体を温める「温」の作用があります。生薬とお酒を合わせた薬酒は気持ちをリラックスさせ、体を温めるので、眠る前のナイトキャップとして有効です。

薬酒が効いていく仕組み
生薬の薬効成分が血行を促すアルコールの作用と協力し合い、血管を巡って効率よく全身に行きわたる。
「温め」「補う」効果のある生薬の薬効成分が体内に吸収される。
コラム

「百薬の長」お酒と冬の養生

江戸時代前期の学者、貝原益軒の『養生訓』では、冬場は「冷えから逃げる」手段として、「朝から遠出する時はお酒を飲んで寒さを防ぎ、空腹で寒さにあたってはならない。お酒を飲まない人は粥を食べなさい、生姜も食べなさい」と、体の中からの保温を説いています。また、「酒は人肌に温めて」との記述もあり、食の滞りを防ぐには、熱燗でも冷や酒でもなく、ほどほどのぬるさがよいとされています。

薬酒に使われる「温性」・「補性」の生薬(一例)

温=体を温める 補=体力や体質の不足を補う
【桂皮(けいひ)】 温
英名はシナモン。体を温める作用がとても強く、冷えを取り除きます。健胃薬としても有用です。
【淫羊藿(いんようかく)】 温補
これを食べた羊が元気になったという故事が知られます。強壮・強精作用で体力の衰弱に効果的です。
【丁子(ちょうじ)】 温補
西洋ではクローブと呼ばれ、スパイスとしても用いられます。消化促進の他、保温作用もあります。
【杜仲(とちゅう)】 温補
お茶には葉を用いますが、生薬には樹皮を用います。虚弱体質に有効で、体力をつけ体を丈夫にします。
【芍薬(しゃくやく)】 補
花は観賞用として有名ですが、生薬は根を用います。薬酒にすると緊張を緩めて、血の巡りをよくします。
【地黄(じおう)】 温補
日本には奈良時代に薬用目的で持ち込まれました。根は古くから血を補い滋養する効果のある生薬として知られています。
【大棗(たいそう)】 温補
ナツメの果実を生薬に用います。健胃作用の他、体を温め、緊張を緩和させる作用があります。
【人参(にんじん)】 補
漢方薬の王様と呼ばれます。胃腸の消化機能を活性化し、身体の活力を高め疲労回復に効果的です。

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「温補」は現代人に必要な養生です

冷えを温め、不足を補う「温補」の考え方は、二千年以上前から東洋医学における養生(健康法)の基本として取り入れられてきました。これまで見てきたように、「体を温めること」「気を補うこと」は密接な関係にあります。どちらか一方ではなく、双方からアプローチすることで相乗的に働き、体全体を健康へと導いていくのです。ストレスフルな生活やライフスタイル、社会の高齢化などを背景に、「寒」や「虚」に傾きやすい現代人にとって、「温補」は健康管理に大切な「備え」であり、かつ積極的な「戦略」ともいえます。

「温」と「補」が相乗的に働き、体を健康に導く。
コラム

冬の養生は春への備え

『黄帝内経』には「冬傷於寒、春必温病」とあり、冬に「寒」の傷害を受けると、春に病気を引き起こすとしています。人と自然界とは互いに影響し合っているという「天人相応」の思想から、四季の変化に反することは病気の原因になると考えられてきました。冬は特に体の冷えに注意し、元気に春を迎えましょう。

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冷えた体を「温め」、体力や体質の不足を「補う」
第2類医薬品
14種類の自然の生薬から造られた薬酒
薬用養命酒は桂皮や丁子など「体を温める」生薬と人参や地黄など体力や体質の「不足を補う」生薬が処方されています。生薬の数は14種類。各々が持つ複数の成分が互いに作用し、効果を発揮する滋養強壮の薬酒です。
効能 次の場合の滋養強壮
・冷え症  ・肉体疲労  ・胃腸虚弱  ・血色不良
・虚弱体質  ・食欲不振  ・病中病後
【用法・用量】
成人:1回20mL、1日3回 食前又は就寝前に服用してください。
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