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記憶の雑学

匂いでタイムトリップできる「プルースト現象」とは?人間の記憶容量は書棚2000万個分もある!? 円周率10万ケタを記憶した達人のおもしろ記憶術とは?——今月は記憶の雑学をお届け!


匂いでタイムトリップできる「プルースト現象」とは?


匂いでタイムトリップできる「プルースト現象」とは?


「甘酸っぱい花の香りから、南の島を旅した時のことを思い出した」「香水の匂いから、昔別れた恋人の記憶がふと蘇った」——特定の匂いによって、それにまつわる記憶がまざまざと呼び覚まされることを、フランスの文豪マルセル・プルーストの長編小説『失われた時を求めて』にちなんで「プルースト現象(プルースト効果)」といいます。この小説の主人公は、ひとさじの紅茶に浸したマドレーヌの香りを嗅いだのがきっかけで、幼年期の記憶を鮮やかに蘇らせていきます。そこから、数千ページにも及ぶ長大な回想物語が繰り広げられていくことになるのです。 ほんのささやかな香りから、はるか昔の記憶が蘇るなんてとてもロマンティックですね。科学的にも嗅覚は記憶と密接な関係があるといわれています。嗅覚は五感の中で唯一、記憶を司る海馬や、喜怒哀楽などの情動を司る偏桃体がある大脳辺縁系とダイレクトにつながっています。そのため、香りの成分が大脳辺縁系に届くと、情緒的な記憶を思い起こしやすいのです。自分の大切な思い出につながる香りを覚えておくと、その香りを嗅ぐことで、いつでも思い出の世界にタイムトリップできるかもしれませんね。


人間の記憶容量は書棚2000万個分もある!?


人間の脳の記憶容量はどのくらいあると思いますか? アメリカのソーク研究所のテリー・セチノウスキー教授らの研究チームが、ライフサイエンス誌「eLife」に近年発表した論文によると、人間の脳の記憶容量は今までの定説の10倍に当たる約1ペタバイトもあるそうです。 具体的にどのくらいの情報量かというと、書類がぎっしり並んだ4段の書棚を想像してみてください。人間の脳には、その書棚2000万個分もの情報を記憶する容量があるというのです。 しかも、同研究チームによると、人間の脳はとても省エネに優れており、記憶を司る大脳辺縁系の海馬では、非常に低エネルギーで高性能の演算をしているのだそう。人間の脳は、涼しい顔をしながら、実はかなりパワフルな働きができるということですね。 近年は、さまざまな分野でAI(人工知能)化に拍車がかかっていますが、人間の脳に秘められた潜在能力は、なかなか奥が深いようです。まだまだAIに負けるわけにはいきませんね。


円周率10万ケタを記憶した達人のおもしろ記憶術とは?


マイナンバーに、銀行口座番号やカード番号、パソコンの暗証番号など、私たちは日々たくさんの数字に触れています。いちいち何かを見なくても、全て覚えていれば楽ですが、不規則な数字の羅列を覚えるのは苦手という人も多いのではないでしょうか。 認知心理学では「マジカルナンバー」といって、人間は7ケタ前後の数字は短期的に記憶できるようです。円周率を「3.14159」と7ケタくらいまで覚えている人が多いのも、そのためです。 しかし、それをはるかに上回るケタ違いの円周率を暗唱して、世界記録を打ち立てた人がいます。2006年に元日立製作所エンジニアの原口證氏が暗唱した円周率は、なんと10万ケタ。暗記のコツは、『ぶっちぎり世界記録保持者の記憶術—円周率10万桁への挑戦』(日刊工業新聞)でも紹介されています。その方法とは、数字をかな文字に置き換えた語呂合わせでした。それによって円周率の数字から、武士が旅をする独自の物語を作り上げたのです。さらに、覚えるコツはもう1つ。苦行のように覚えるのではなく、楽しみながら覚えることです。大事な数字を忘れないよう、独自の語呂合わせを作ってみてはいかがでしょうか。