HOME > 健康の雑学 >  【2016年12月号】 寒の雑学

寒の雑学

「おおさむこさむ」って何のこと?なぜオヤジギャグを寒いというの?ブリも野菜も人も寒さで引きしまってうまみが増す!——今月は寒の雑学をお届けします。


「おおさむこさむ」って何のこと?


「おおさむこさむ 山から小僧が泣いてきた 寒いといって泣いてきた♪」という日本の冬の風物詩ともいうべきわらべ歌があります。この「おおさむこさむ」には諸説あり、1つは北風を象徴する二十四節季の「大寒(だいかん)」「小寒(しょうかん)」を意味するという説。「寒」とは暦の上で最も寒さが厳しくなる期間で、その前半が「小寒」、後半が「大寒」です。また別の説では、「おお、寒い!」が転じて「おおさむ」になったという、オヤジギャグのようなダジャレ的解釈もあるようです。
歌詞の「小僧が泣いてきた」は、「小僧がやってきた」「小僧が飛んできた」というバージョンもあるようで、「小僧」とは北風や木枯らしの擬人化ではないかともいわれています。
寒くなると関東や近畿では「木枯らし一号が吹きました」というニュースを耳にすることがあると思いますが、「木枯らし」とは晩秋から初冬に最初に吹く毎秒8m以上の北よりの風のこと。同じく寒い季節によく聞く「冬将軍」とは、冬季に周期的に南下してくる冷たい北極気団のこと。これが到来すると、日本海側に雪が降ります。かつてロシアに遠征したナポレオン軍が、極寒に屈して敗退したことから「冬将軍」の名が付きました。もしわらべ歌「おおさむこさむ」の「小僧」が「冬将軍」だったら、ちょっと怖いですね…。


なぜオヤジギャグを寒いというの?


なぜオヤジギャグを寒いというの?


おもしろくない芸を「寒い(さむい、さぶい)」といいますが、まったく笑えず顔の表情が凍り付いてしまったり、客がシラケて場の空気が冷ややかになることから使われ始めた表現です。ギャグを外したりすることを「すべる」といいますが、「寒い」も「すべる」もお笑いコンビ「ダウンタウン」が発信源となったという説が有力です。
「寒い」「すべる」の代表例といえば、オヤジギャグです。オヤジギャグは「ありがとうがらし」「トイレにいっといれ」といった中高年男性が口にしがちな安易なダジャレの総称で、1990年代に関西方面で発生した若者言葉の一種といわれています。
「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」で世界的ブレイクを果たしたピコ太郎さんが、日本外国特派員協会で外国人記者に会見を開いた際、「驚き桃の木20世紀」などのオヤジギャグ連発ですべっていましたが、オヤジギャグを通訳するのは至難です。
ちなみに、寒いギャグをいうと、英語圏では「Very funny(とてもおもしろい)」と返されますが、これは笑えないことへの痛烈な皮肉なので、勘違いしないように!


ブリも野菜も人も寒さで引きしまってうまみが増す?


四季のある日本では、冬の寒さを利用した食べものが多くあります。日本酒や味噌、しょう油などの発酵食品は、「寒造り」あるいは「寒仕込み」といって、寒い時季に仕込むことでゆっくり発酵させてうまみを引き出します。これは温度が低いため、カビ等の雑菌の発生を抑える意味もあります。寒の内に汲んだ水は古くから「寒の水」と呼ばれ、雑菌が少なく、長期保存に適しているとことから、味噌や醤油づくりにも生かされてきました。
また、産卵前の冬に旬を迎える「寒ブリ」「寒サバ」などは、栄養をたっぷり蓄えているため、脂が乗っており、格別の風味があることから珍重されてきました。
ほうれん草など収穫間近の葉物野菜を寒さにあてる「寒じめ野菜」は、いかにもきゅっと縮み上がったように葉が縮れますが、甘みやビタミン類がアップします。
寒い時季に海や川で泳ぐ「寒中水泳」は神事に由来しますが、日本各地の冬の伝統行事になっています。ヨーロッパでも寒中水泳イベントが見られ、有名なオランダ・ハーグで50年以上前から恒例の寒中水泳大会には、カラフルな水着姿の老若男女が毎年1万人以上集まります。これは修行というより、新年を祝ってハッスルした人が海にダイブしたのがきっかけで始まったのだそう。寒中水泳は自律神経の改善に役立つといわれていますが、高血圧や心臓の弱い人はヒートショックのリスクがあるので控えましょう。