HOME > 健康の雑学 >  【2015年12月号】 寝具の雑学

寝具の雑学

掛けぶとんの元祖は「ふすま」だった?日本最古のベッドで寝ていたのは誰?「枕投げ」が競技大会に?! 今月は眠りに欠かせない寝具の雑学をお届け!


掛けぶとんの元祖は「ふすま」だった?!


一般に、マットレスや掛けぶとん、シーツなど寝るためのアイテムを「寝具」と総称しますが、戦前は寝具全般を「ふとん」と呼んでいました。「布団」は当て字で、「蒲団」が正しく、鎌倉時代の禅僧、道元が著した『正法眼蔵』にも、「座禅の時、袈裟をかくべし、蒲団を敷くべし」と書かれています。といっても、ふかふかした綿入りぶとんの上で座禅をしていたわけではなく、当時の蒲団は抽水性の植物である蒲(がま)などを編んだ座具を指していたようです。綿入りぶとんが普及するのは江戸時代になってからといわれますが、綿が高価だったため、庶民には高嶺の花でした。
庶民はといえば、「たたみ」に「しとね」を敷いて「ふすま」を掛けて寝ていました。…というと、なんとも奇妙な絵柄を想像するかもしれませんが、「たたみ」はマットレスのようなもの、「しとね」は敷パッドのようなもの、「ふすま」は臥す(ふす)時に掛ける四角いもの、つまり掛けぶとんを指す言葉で、それらの素材には、麻、樹皮、紙などが用いられていたようです。
和室の間仕切りを「襖(ふすま)」というのは、臥す場所の間仕切りに使われた「ふすま障子」の略であるといわれています。今は「ふすま」を掛けて寝ていた時代と違い、寝具の質や機能も向上し、バリエーションも豊かになりました。快眠のためには、自分に合う寝具を選ぶことが大切です。

ふとんで寝る猫


日本最古のベッドで寝ていたのは誰?!


ベッドは紀元前からあったといわれ、古代エジプトの住居跡からは植物のつる葉の筋などでメッシュ状に編んだ床板のベッドが見つかっています。日本でも弥生時代の竪穴式住居跡に、土で高低差をつけた土製のベッドもどきの痕跡があり、古墳時代の住居跡からは、ベッドと思われる木枠の跡も発掘されています。
 現存する最古のジャパンメイドのベッドは、「御床(おんとこ)」と呼ばれており、聖武天皇(701〜756年)が愛用していたようです。「御床」は、長さ2m強、幅約1.2m、高さ約40cmの総ひのき造りで、床板はスノコ状の角材で組まれています。これを2つ並べて使っていたようなので、まさにキングサイズの堂々たるベッドでお休みになっていたわけです。
古代エジプトのベッドは床板が植物のメッシュ編み、聖武天皇のベッドはスノコ状でしたが、どちらも通気性を考慮したものと考えられます。床板がスノコ状のベッドは現代のベッドにも継承されていますが、湿気の多い国ではとても理にかなった構造といえます。いにしえ人たちのもの作りの知恵は素晴らしいですね。

「枕投げ」が競技大会に?!


枕は快適な眠りに欠かせないものですが、近年ではある競技大会のメイングッズとして使われています。その名も「全日本まくら投げ大会」。学生時代に修学旅行で先生の目を盗んで枕を投げ合って遊んだ人も多いと思いますが、この大会は枕投げの正式ルールに加え、全日本まくら投げ協会公認の「まくら投げ専用枕」まで用意されているという徹底ぶりです。
伊東温泉で実際に行われた大会では、体育館に敷き詰められた20畳の畳の島に、各チーム5名ずつの選手が浴衣を着て乗り込みます。攻撃に使う枕は2つ、防御に使う掛けぶとんは1枚。敵陣営の大将目がけて枕を投げ込み、枕を当てられた選手はふとんで寝たふりをするのが決まりで、敵の大将に枕がヒットしたら勝ちです。試合中、1セットに1回だけ「先生がきたぞ〜っ」という必殺コールを使えます。このコールをされたチームは全員、攻撃をストップして10秒間寝たふりをせねばならず、その隙にコールをしたチームの選手1名が敵陣に侵入し、敵の枕を奪えます。会場には枕弾がびゅんびゅん飛び交い、参加者はみな髪も浴衣の裾も乱れまくりの本気プレイに燃えるため、体育館はまさに戦場と化すようです…。
ほかにも、枕投げの飛距離を競う「温泉旅館まくら投げ世界選手権」が各地の温泉郷で開催されたり、金沢の温泉旅館が「まくら投げ専用枕」もセットになった宿泊プランを提供するなど、枕投げが密かに熱い様子。日頃の運動不足解消やストレス発散にもよさそうですね!

まくら投げ大会1 まくら投げ大会2