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柑橘の雑学

江戸の豪商・紀伊国屋文左衛門はミカンで大富豪になった! 『蜜柑』と『檸檬』——文学をめぐる柑橘パワー、血沸き肉躍るイタリアの痛い仰天オレンジ祭とは? 今月は柑橘をめぐる雑学をご紹介!


雑学1 紀伊国屋文左衛門はミカンで大富豪になった!


江戸・元禄時代に一財を築いた豪商・紀伊国屋文左衛門は、ミカン産地の紀州(和歌山県有田郡)の出身でした。文左衛門が20代の頃、紀州ではミカンが大豊作となりましたが、度重なる嵐で江戸にミカンを運ぶ航路をはばまれ、上方では江戸に行くはずのミカンが余って価格が大暴落する一方、江戸ではミカン不足で価格が高騰…。そこに目を付けた若き文左衛門は、借金をしてまで故郷紀州でミカンを買い集め、オンボロ船で嵐に耐えながら命からがら江戸に乗り込みました。
ミカン不足だった江戸では、文左衛門の運んできたミカンが高値で飛ぶように売れ、嵐を乗りこえてきた文左衛門一行は、「あれは紀の国のミカン船♪」というカッポレにも唄われるほどの人気者に! この有名な“ミカン船伝説”にも顕著なように、市場ニーズに敏感だったことから大成功した文左衛門は、江戸時代を代表するマーケティングの天才といえるかもしれませんね。


雑学2 『蜜柑』と『檸檬』〜文学をめぐる柑橘パワー


芥川龍之介の小説『蜜柑』と、梶井基次郎の小説『檸檬』は、いずれも大正時代に書かれた短編ですが、奇しくも柑橘を題名にしたこの2つの作品には、ある共通点があります。『蜜柑』の主人公は「云ひやうのない疲労と倦怠」を、『檸檬』の主人公も「えたいの知れない不吉な塊」を心に抱えています。
『蜜柑』の主人公は、列車に乗り合わせた田舎娘に最初は不快感を覚えますが、彼女が列車の窓を必死に開け、奉公先に向かう彼女を見送りに来たとおぼしき弟たちに「心を躍らすばかり暖な日の色に染まつてゐる蜜柑」を投げ与える光景を見るや、「この時はじめて、云いやうのない疲労と倦怠とを、下等な、退屈な人生を僅(わずか)に忘れる事が出来た」と語ります。また、『檸檬』の主人公も、八百屋で檸檬を買うと、「始終私の心をおさえつけていた不吉な塊がそれを握った瞬間からいくらかゆるんできたとみえて、私は街の上で非常に幸福であった」といい、檸檬の香りをかぐことで「元気が目覚めてきた」と語ります。
古来より、柑橘は生命力を象徴する存在とされてきましたが、文学の世界でも柑橘は主人公たちの拭いがたい憂いを払うパワーを発揮しているようです。


おみくじ


雑学3 血沸き肉躍るイタリアの痛いオレンジ祭


イタリア北部、トリノ郊外にあるイブレアでは、毎年2月中旬から3月上旬頃に「Battaglia delle Arance(オレンジ・バトル)」と呼ばれるカーニバルが開催されます。その名の通り、数十トンものオレンジを力まかせに投げ合うバトルが街中の広場で同時多発的に繰り広げられるわけですが、イタリアのオレンジは日本のミカンと違ってかたいので、直撃すると青あざになったりタンコブができるほど激痛なのだとか…。そんな痛いお祭りですが、なんと700年以上前から続く伝統行事なのだそう。中世時代にイブレアを支配していた独裁君主に対して、貧しい農民たちが農作物を投げて一揆を起こしたのがこの祭りの発端とか。今も馬車に乗った独裁君主チームと民衆チームに分かれてオレンジをぼこぼこ投げ合うバトルが展開します。バトル後は広場一帯が潰れたオレンジの海と化しますが、オレンジの香りにはリフレッシュ効果があるので、凄まじいバトルの産物とは思えないスイートで爽やかなオレンジ芳香浴を満喫できそうです。