HOME > 健康の雑学 >  【2013年12月号】 温泉の雑学

温泉の雑学

世界各地の温泉を最初に発見したのは、人間ではなく鳥獣たちだった?! 温泉が老化するってどういうこと?電車を待ちながら湯浴みできる「駅前温泉」ならぬ「駅中温泉」とは?今月は温泉にまつわる雑学をご紹介!


名湯を発見した鳥獣たちの霊力


観光庁発行の『観光白書』では、常に行きたい観光地のトップに上がるのが温泉。日本人の温泉好きは古代にまで遡り、『古事記』『万葉集』をはじめ、『出雲風土記』などにも各地の温泉の効能が記されています。江戸時代には農民や漁民が農閑期・魚閑期を利用して湯治に出かける習慣が広まり、まさに現代人の「温泉で日頃のストレス解消&活力充電!」という発想の原型がつくられていきました。

しかし、今でこそ全国の温泉地の観光化が進んでいますが、昔の人はどのようにして温泉を発見し、その効能を見出したのでしょう? 日本では鳥獣が温泉で傷などを癒すのを見て、人間がその不思議な効能に気づいたという温泉伝説が数多く残っています。例えば、足を痛めた白鷺が岩場に流れる湯に浸かって傷を癒やし飛び立って行ったことから人々に知られるようになった道後温泉(愛媛県)の白鷺伝説しかり、鹿部温泉(北海道)や鹿教湯温泉(長野県)の鹿伝説しかり、上山温泉(山形県)の鶴伝説しかりです。
ヨーロッパにも同様に鳥獣の温泉伝説が各地で伝承されており、有名なドイツのバーデン・バーデンは鹿が、イギリスのバースは豚が、チェコのカルロヴィ・バリは犬が見出した温泉地なのだそうです。自然治癒力に対する感覚が、鳥獣は人間よりはるかに研ぎ澄まされているのでしょうね。



老化した温泉は、気の抜けたビールに似ている?!


大自然の恵みともいえる天然の温泉。しかし地震や火山活動、河川水の変動など、自然のさまざまな変化によって、温泉の質や量は大きく変化します。地中深くにある温泉水が地表に湧き出ることで、酸素や紫外線にさらされて温泉の化学成分が変化するのはもちろん、温泉水に溶けていた炭酸泉や硫黄泉などのガス成分も空気中に逃げ出します。このように、温泉水が変化して効果が低下する現象を、温泉の老化現象といいます。いうならば、老化した温泉とは気の抜けたビールのようなものなのです。 できるだけ老化していない温泉に浸かるためには、地表に湧出して間もないフレッシュな温泉水を利用するのがおすすめです。源泉に水道水を加えて循環・ろ過を繰り返している老いた温泉水と、源泉かけ流しの新鮮な温泉水では、同じ温泉でも温泉本来の効果が全く違うのです。


電車を待ちながらひと風呂!「駅前温泉」ならぬ「駅中温泉」とは?


1960年代に人気を博した日本映画「駅前シリーズ」。その1つに『喜劇 駅前温泉』という福島県の磐梯熱海駅を舞台にした映画がありました。近年では磐梯熱海温泉の源泉を利用した「駅前足湯」が誕生し、人気を呼んでいるそうです。 全国的にも1980年代以降、「駅前温泉」ならぬ、駅舎内でひと風呂浴びれる「駅中温泉」が日本各地の鉄道駅に登場して話題になっています。その草分けといわれるのが、上越新幹線「越後湯沢駅」(新潟県)のコンコースにある「酒風呂 湯の沢」という温泉浴場です。越後の地酒を集めたコーナーにあり、越後湯沢温泉の源泉に日本酒が混ぜてあるので、お酒の成分で血行促進してあったまり、アミノ酸効果で肌もなめらかになるのだとか。ただし、つい長風呂して新幹線に乗り遅れないようにご注意を。


「越後湯沢駅」内にある温泉「酒風呂 湯の沢」


最近では、電車のホームで気軽に足湯を楽しめる駅も各地に増えています。長野県の「上諏訪駅」では、電車の待ち時間を利用して、上諏訪温泉の源泉から引いた快い足湯に浸かって旅の疲れを癒すことができます。また、京都の嵐電「嵐山駅」でも、9年前に嵐山温泉が開湯したのを記念してホームに足湯が誕生。嵐山観光の旅人で賑わっています。ホームの足湯なら、電車に乗り遅れる心配もなく、足疲れもスッキリ解消できて一石二鳥ですね!


上諏訪駅ホームにある人気の足湯。写真提供:諏訪観光協会