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笑いは究極のバイタリティー!

動物が毒を吐く仕草が笑いに進化した?つくり笑いでも健康効果あり?ユーモアは生死を左右する?おもしろくてタメになる、笑いにまつわる雑学をご紹介します。



毒を吐く仕草が笑いに進化?——笑いのルーツ考


刺激に驚いたときの防御反応

忘年会や新年会で飲み過ぎ食べ過ぎが続き、ちょっと胸がむかむか……この時季はそんな人が多いかもしれませんね。実は「笑い」のルーツには、動物がものを吐き出す仕草が進化したものであるという説があるんです。
哺乳動物は口の中に有害な物質が入ると、びっくりして口を左右に広げ、歯をむき出し、舌を突き出して高い叫び声をあげます。これは有害物質が食道や気管に吸い込まれないように声門を閉じ、呼吸を強く吐き出すという一種の防御反応です。そういえば、猫が毛玉などを吐くとき、「へっへっ」と息を吐きながら口角を上げている様子はまるで笑っているように見えるときがありますよね。

劣位の笑いから、社交上の微笑みに

チンパンジーなどの霊長類にも笑いがあると唱えている動物行動学者ファン・フーフによると、驚いたときに歯をむき出す仕草が、危険を伝達する防衛のシグナルとしての意味を持つようになったといいます。
サルはここからもう一段階進み、優位な相手に出会ったときに敵意がないことを示す意味で、口だけでなく目の動きも加わった「劣位の表情」を見せるようになります。
最近の動物学研究によると、この「劣位の表情」が「親和の表情」に進化し、さらに人間の「社交上の微笑み」へと進化したという説が有力なのだとか。まさに笑いは円満なコミュニケーションに欠かせない潤滑油ですね。



つくり笑いでも健康効果あり!?


「幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」

「病気には幸福が最良の武器である」といったのは、『幸福論』で知られるフランスの哲学者アラン。彼は「幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」という名言も残しています。
一方、「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」と言ったのは、アメリカの心理学者ウイリアム・ジェームズとデンマークの心理学者カール・ランゲです。彼らの説によると、人間は「うれしい」とか「悲しい」といった感情を自覚するよりも、顔の表情などの生理学的な反応のほうが先に起こるのだそうです。

笑顔のフィードバック効果

ジェームズやランゲの理論に則ると、つくり笑いであっても、脳内にはハッピーな感情がフィードバックされるということになります。これを「顔面フィードバック効果」といいます。
試しに、口角を10度〜20度ほど上げて笑顔をつくってみましょう。すると、頬の大頬骨筋や頬骨が上がり、それに伴って目の周りの眼輪筋が動き、目尻が下がるのがわかるはずです。この一連の表情筋の動きが脳にフィードバックされ、快さや喜びの感情が湧き上がるというわけです。岡山県の伊丹仁朗医師の実験では、つくり笑いをするだけでも、免疫力を上げるナチュラルキラー細胞が活性化したそうです。
口角の上がったハッピーな笑顔をつくる簡単な方法としては、まずわりばしを横にして前歯でくわえます。次にわりばしの高さよりも口角を上げ、上の前歯が見える状態を30秒ほどキープした後、わりばしをそっと抜きます。この表情を笑顔の基本形として、日頃から笑いの表情筋を鍛えましょう。



笑いは究極のバイタリティー


極限の笑い

ナチスによって強制収容所に送り込まれ、奇跡的に生還したユダヤ人の精神科医ヴィクトール・エミール・フランクル。その壮絶な体験に基づいた記録を克明につづった『夜と霧』(原題:『強制収容所における一心理学者の体験』)は、世界的なロングセラーとして今なお読み継がれています。
フランクルはこの世の生き地獄を体験した人ながら、常にユーモアを愛する性格だったといわれています。過酷な強制労働、拷問、飢餓、伝染病、ガス室……死と隣り合わせの収容所の中でも、互いにユーモアを言って励ましあっていたと著書の中で語っています。笑うことが人間の生きる底力になり得ることを、彼は身を持って知っていたのです。まさに極限の笑いといえるでしょう。
フランクルは別の収容所で最愛の妻を亡くしますが、戦後に再婚し、92歳で亡くなる直前まで家族を冗談で笑わせ続けたといいます。

ユーモアは生命の最後の拠りどころ

「本当に生きるか死ぬかの窮地に追い詰められた者にとって、ユーモアは最後の拠りどころ、命綱、緊急脱出装置になる」——これは、1990年代の熾烈なボスニア内戦の状況をレポートした『サラエボ旅行案内〜史上初の戦場都市ガイド』の解説に書かれた作家・池澤夏樹氏の弁。
彼は「立っていても踊っていても銃弾が当たる確率が同じだとすれば、踊ったほうがいいと考えるのがユーモア」「事態が悪くなればなるほどユーモアの生産量が増すのだ。これが人間の叡智であり、創造力であり、文化の本当の底力というものだ」とも語っています。まさに笑いは究極のエネルギー源といえるかもしれませんね。