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年齢と健康の雑学


「アンチエイジング」が流行ですが、自分の年齢をうけいれることもまた大事です。年をとるということは、それに見合う価値のある人生を築くことですから。


白髪は抜くと増える!?増えない!?


加齢とともに増え始めるものといえば、白髪。毛根のメラニン色素を作る力が衰え、髪の毛自体の色素細胞が弱くなるために、髪が白くなるといわれています。

よく「白髪は抜くと増えるから抜いちゃだめ」といわれることがありますが、前述のとおりメラニン色素を生成しているのは毛根ですから、抜いたとしても白髪は増えません。逆に抜いてしまうことによって頭皮を傷める可能性も否めないので、抜かないほうがよいといえます。

白髪は、昔から「長寿の象徴」と見みなされている向きもあります。全国に点在する白鬚(しらひげ)神社の祭神は、猿田彦大神。「旅の安全」をつかさどる神であると同時に、長寿の神様としても知られ、白髪・白ひげ姿で肖像化されることも少なくありません。

また「白眉(はくび)」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。「叡智ある人」のことを指して使われる言葉ですが、その由来は中国の三国志時代に遡ります。「蜀(しょく)」という国に、5人の兄弟がいました。いずれも才覚にあふれた人物でしたが、そのうち最も叡智に長けていたといわれるのが、四男の馬良です。馬良は白く長い眉を持つ人物だったことから、才気溢れることを「白眉」と呼ぶようになったそうです。髪やひげ、眉の白さは、長寿のみならず「智恵」を象徴する意味合いもあるようです。

また、「白髪はカッコいい!」というイメージを体現した言葉もあります。近年ではあまり耳にすることがなくなりましたが、白い髪の混じりはじめた魅力的な男性のことを「ロマンスグレー」と呼んだりしますよね。

この言葉は和製英語で、昭和30年前後に戯曲家の飯沢匡が、自身の戯曲のタイトルにしたことが日本における発端といわれています。その後、1955年公開のアメリカ映画「旅情」ので主演男優、ロッサノ・ブラッツィがいわゆる見事なロマンスグレーで、「シブくてカッコいい」というイメージが一般に浸透したといわれています。日本の役者さんでも、シブくて味のあるロマンスグレーの人、けっこういますよね。年齢を重ねるごとに、誰でも増える白髪。それがロマンスグレーに転じるかどうかは、心の持ちようといったところでしょうか。


ハッピーエンドにならない「不老不死」の話


人間、誰しも年齢を重ねていくものです。しかし、はるか昔から“歳を取ることを拒否したい”欲求がありました。老いないこと、そして究極的には「死なないこと」を尊ぶ、「不老不死」の考え方です。

不老不死の発想は、東西問わずどの文明においてもみられます。たとえば、フェニックス(不死鳥)。数百年に一度、火の中に飛び込んで、再び雛鳥となって再生するといわれている伝説上の鳥です。フェニックスの血を飲むと不老不死になるという伝承もあり、手塚治虫さんの漫画「火の鳥」も、このフェニックス伝説をもとに描かれています。

さらに中国の始皇帝は、中国統一を果たした頃から不老不死を求め、その薬を作ることができる仙人探しを行っています。始皇帝に不老不死の話をして、探してくるよう命じられたのが徐福という人物です。

諸説ありますが、徐福は薬を求めて日本にやってきたといわれています。ちょうと縄文時代から弥生時代に変わる頃の話です。三重県熊野市や佐賀県佐賀市など、日本の各地に「この地に徐福が来た」という伝説が遺されており、和歌山県新宮市には徐福の石像が建っています。

時の権力者が求めた不老不死の妙薬。しかしながら、当然そんなものはありません。また、古今東西のたくさんの物語や伝説に不老不死の話が登場しますが、そのほとんどが「ハッピーエンド」になっていない点にも注目したいところです。

日本の各地にのこる「八百比丘尼(はっぴゃくびくに、やおびくに)の伝説」をご存じでしょうか。人魚の肉を食べてしまった女性が、十代の若さを保ったまま何百年も生きることになった、という伝説です。連れ添った夫も亡くなり、村の人びとにも疎まれたことから諸国を尼として巡り歩き、最後は世を儚んで臨終のときを迎えます。

この伝説のように、不老不死にまつわる話は「歳を取らない喜び」ではなく「歳を取ることができない不幸」を描くものがほとんどです。歳を重ねるといった、生物にとってごく当たり前の現象を不幸とみなしてしまったら、その考え自体そのものが不幸だ…という作者のメッセージが、これら物語には込められているといえるでしょう。


しかしながら、「不老不死」の生物も地球上にいる!?


「不老不死は伝説上の思想」とこれまで述べてきましたが、実は、「死なない生き物」がこの世にいる、と言ったら誰しも唖然とすると思います。

そんな「不老不死の生き物」として近年注目を集めているのが、「ベニクラゲ」というクラゲです。クラゲは通常、有性生殖を行ったのちに体が溶けて死を迎えます。しかしベニクラゲは体が溶けずに細胞が未成熟の状態になり、その肉体から再び新しい“若い生体”が誕生するのです。

この生態を発見したのは、イタリアのレッチェ大学のボエロ博士なる人物。学生が飼っていたクラゲの水槽が長らくほったらかしになっていて、もう死んでいるだろうとふと覗いてみたところ、いるはずのない若いベニクラゲが泳いでいたことから、生態が解明されていきました。遠い昔の話ではなく、1990年代に入ってからの話です。

その後、他にも、同じような現象が繰り返されるクラゲがいることが解明されています。その研究は近年始まったばかり。世にも不思議なクラゲの生態に、今後も注目したいところです。