HOME > 健康の雑学 > 【2011年1月号】乾燥の雑学


乾燥の雑学


海外に行くと、日本よりも乾燥しているって本当?乾燥がもたらす美味なグルメは?いろいろな角度から「乾燥」についての雑学を集めてみました。


海外旅行時に気をつけたい髪とお肌のケア


日本はいわゆる“多湿”の国。そのため、海外旅行中に「日本にいるときよりお肌が乾燥する!」という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?別に砂漠地帯に出かけずとも、ヨーロッパなどを旅行すると、乾燥していることを実感する方が多いようです。

ホテルの部屋に保湿器が備わっているところもありますが、ない場合はどうするべきか?そんなときは、アナログな方法で保湿するのもひとつの手。お湯をコップなどに入れて置いたり、濡らしたタオルをハンガーにかけて吊るしておいてもよいでしょう。バスタブにお湯を張ったなら、入浴後にあえて浴室のドアを開け放しておくこともひとつの方法です。

もうひとつの難敵が、硬水です。硬水は、軟水よりもミネラル成分を多く含んでおり、身体によいことでも知られていますが、生活用水には不向きな面もあります。硬水の出るシャワーで髪を洗うとパサパサになってしまうことが多いんです。イギリスをはじめ、欧米諸国には硬水が生活用水になっている地域はたくさんあります。

なぜかといいますと、硬水に含まれている成分がシャンプーの成分と反応し、「金属石鹸」と呼ばれる物質が生まれるため。これがパサつきの原因になると同時に、「石鹸」と名がついているものの、金属石鹸には洗浄力がありませんので、汚れも落ちづらくなります。軟水を使った時と比べ、泡立ちもよくありません。

特に女性の方は、海外に旅行する際、いつもよりも手厚いケアができるよう、コンディショナー、保湿クリームなどを持参するようにしましょう。

「乾燥」を利用した人間の知恵に敬服!!


人間にとってあまり良いとはいえない「乾燥」ですが、こと食材に関しては、乾燥そのものが調味料といえるほど、絶大な効果を発揮してきました。

もちろん最初は、乾燥させることで食材を保存する目的が主だったことでしょう。しかしながら、干すことによって以前の状態と味が変わり、旨味が増すといったことも見逃せません。人間の歴史の中には、これらを口にして「干したほうが美味しいよ!」と声を発した人も多くいたことでしょう。

干すことが美味さにつながる点に、おおいに着目したといえるのが中華料理でしょう。ふかひれやなまこ、アワビなど、干した食材がたくさんあります。とりわけアワビには、いったん塩漬けにしてから煮込み、それを天日で乾燥させた「明鮑(みんぽう)」という高級食材が珍重されています。出来上がった後も3年ほど熟成させると、さらに旨味が増すのだとか。手間暇と時間をかけた逸品です。

日本においても、乾燥する冬に「干す」風景があちこちでみられます。庄内の初冬の風物詩は「干し大根」。干すことによって味が濃厚になり、香ばしくなるといいます。琵琶湖畔で冬によく見られるのは、赤カブを干している風景。寒風にさらして旨味を引き出します。

新潟県の村上地方では、晩秋になると軒先にズラリと「鮭」がぶら下がり、「塩引鮭」が作られます。こちらも乾燥させることに変わりありませんが、日本海から吹く冬の風には適度な湿気が含まれているため、身が硬くなり過ぎずに出来上がるというわけです。


江戸の火事も、冬場の乾燥が「大火」につながった


昔懐かしい冬の風物詩のひとつが「夜回り」。拍子木をカチカチッと打ちながら「火の用心!」と声を発し、街を練り歩きます。今ではほとんど耳にしなくなりましたが、一部では、伝統的かつ正しい習わしを見直す意味で、町内会などで実践しているところもあるようです。

冬に火災が多いことは、よく知られていること。火災と湿度は実に密接な関係を保っています。消防庁の平成21年のデータによると、出火件数が最も多いのが4月で、5932件。次いで3月の5244件。12月、1月、2月も4000件を超えています。逆に最も少ないのは7月の2936件、次いで6月の3651件です。一年のうち最も乾燥しやすい時期が最も火災が多く、逆に湿度が高まる梅雨の時期が少なくなっています。真冬よりもやや春先にかけての件数が多くなるのは、日本全域が乾燥するからといえるでしょう。真冬は雪が降っていた日本海側の地域も、春になると乾燥しはじめます。

この傾向は、大きな火災が度々発生していた江戸時代も同じ。江戸の三大大火といわれる「明暦の大火」「明和の大火」「文化の大火」、さらに“八百屋お七の火事”といわれた「天和の大火」など、大火のほとんどが現在の暦の1月から4月にかけて発生しています。雨が降らず、北から吹く北風が火事を延焼させているといえます。

延焼の原因は乾燥ですが、きっかけとして多いのが放火でした。そこで「火付け」と呼ばれる放火犯を取り締まる「火付盗賊改」という役職が出来たのも江戸時代。池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』の長谷川宣以(のぶため)も、火付盗賊改を統括する火付盗賊改役です。時代劇では、略して「火盗改」などとも言われます。 これからの季節は特に「火の用心」を意識することが大切です。みなさんも十分にお気をつけください。