HOME > 健康の雑学 > 【2010年11月号】スイーツの雑学


スイーツの雑学


今月は、世界のスイーツ雑学をご紹介します。スイーツにももちろん、材料や作り方にお国柄の違いが表れます。でも、甘いモノを食べたい気持ちはどこの国の人々も同じなのかもしれませんね。


カナダの国旗に描かれている「甘味のもと」とは?


有史以来、人類が追い求めてきたもののひとつが「甘味」です。甘いフルーツや作物などを除き、最も古い甘味といわれているのはハチミツ。紀元前のものといわれる洞窟壁画などにハチミツと思しき記述が象形文字で残っているほどですが、巣を壊さずに定期的にハチミツを採る現在の養蜂技術が生まれたのは19世紀になってから。比較的新しい技術なんですね。

一方、サトウキビから採取する砂糖も、紀元前2000年くらいからインドで使われていました。日本に入ってきたのは奈良時代。一説によると、鑑真によってもたらされたといわれています。この上ない貴重品であったため、当初は薬として利用されていたそうです。

サトウキビだけではなく、自然の恵みを生かした糖類は他にもあります。“サトウダイコン”としても知られる甜菜(てんさい)は、その根っこから糖分を抽出して砂糖を生成します。全世界の砂糖生産量の約3割強は、この甜菜から出来ているのです。また、砂糖椰子の樹液から砂糖(パームシュガー)を生成することもあります。

そしてサトウカエデ。カナダの国旗に描かれている、あの葉っぱの樹木です。この木の幹をうがって、ポタポタと流れ出る樹液を採取して煮詰めたものが、いわゆるメープルシロップ。100%天然のメープルシロップは多くのミネラル、ビタミンを含むだけでなく、ハチミツや上白糖よりも低カロリーということもあって最近再び注目を集めています。

メープルシロップの一大産地、カナダでは早春になると収穫祭が各地で行われます。そこでの定例イベントが、「メープルタフィーづくり」。アツアツに熱したメープルシロップを雪を上に垂らして、固まったシロップ部分に棒をあてがってくるくる回します。縁日などでも見かける「水あめ」のようにして食べるわけですが、天然の甘さと雪の冷たさが相まって、至福の味となります。小さな子どもはもちろん、大人までも楽しげに食べるカナダの春の風物詩です。

「無洗米」に欠かせないスイーツとは?


世界には実に多種多彩なデザートがあります。ここでいくつかご紹介してみましょう。 まずはアフリカのデザート「デゲ」。北アフリカから中東にかけての定番料理「クスクス」は、小麦に水を混ぜて小さな粒状にしたもの。肉や野菜、スープ類と併せて食べることが一般的ですが、クスクスにヨーグルトや砂糖、牛乳を加えたものが「デゲ」です。パイナップルなどの果実を加えることもあります。他にもクスクスは、ナッツや砂糖をまぶしたり、ブラジルではココナッツミルクなどをあしらって、デザートとして食べられています。

アジアで変わり種デザートといえば「亀苓膏(きれいこう)」。日本では「亀ゼリー」という名前で、たまに中華料理店などのメニューに加わっていることもあります。亀の腹甲を干したものを粉末状にして、そこに甘草や仙草などの生薬を加え、陶器で蒸したものです。特有の苦みがあるため、デザートとして供される場合はハチミツやシロップ類がかかっていることが一般的なようですね。

古くから美容効果が期待できるといわれ、漢方としてもお馴染みのツバメの巣も、香港などでは人気を博しています。最もオーソドックスな作り方は、乾燥したツバメの巣を戻し、水と氷砂糖を入れて蒸す手法です。亀ゼリーもツバメの巣のデザートも、医食同源を表した薬膳といえるでしょう。

日本ではすっかりおなじみになりましたが「タピオカ」も最初に見たときは「なんだこれ!?」と思った方も多いのでは?タピオカの原料は、南米原産の植物であるキャッサバの根。そこから抽出したデンプンが、あの独特のねっとりした食感の元になります。粉状のものもありますが、日本では丸っこい粒状の「タピオカパール」のほうが有名ですよね。タイなど東南アジアでも、粒状のタピオカをココナッツミルクと併せて食べることが一般的です。

ちなみに、タピオカは意外なモノにも使われています。それは、昨今よく出回っている無洗米。お米を洗う作業は、米に付着している米ぬかを洗い落とすことを目的としていますが、無洗米はあらかじめ米ぬかが取り除かれています。タピオカのデンプンには米ぬかを吸着する作用があるため、精米されたお米にタピオカを混ぜ合わせて加熱処理することで、洗う必要がない衛生的な無洗米が出来上がるというわけです。


季節の素材を使わずに「季節感」を出したスイーツ


世界のスイーツは多種多彩。それぞれ旬の果物などを取り入れたりして季節感を出すことも多々ありますが、世界で最も季節感を重んじているのはどこの国のスイーツか?おそらくそれは、日本にあります。

日本のスイーツといえば和菓子。和菓子といっても煎餅など、水分量が20%未満の「干菓子(ひがし)」にあまり季節感はありませんが、40%以上水分を含んだ「生菓子(なまがし)」の分野において、大福など普段のお茶うけではなく、品のある「上生菓子(じょうなまがし)」は、“季節感(花鳥風月)ありき”で作られています。

春はなんといっても桜。桜餅のように実際に桜の葉を用いていなくても、餅を薄紅色に色づけ、桜の形に整えて季節感を表現することが一般的です。そもそも、生菓子に用いる材料は、水、豆、砂糖、米が基本。材料は世界のスイーツと比べても至ってシンプルで、豆の煮かたや水の分量などで多彩な味と形を生み出すことが真髄です。もちろん、桜だけでなく、菜の花やうぐいす、蝶々、春霞、お雛様などモチーフは様々です。

夏の上生菓子は、風鈴、あやめ、あじさい、あさがお、桔梗など、薄緑や薄紫などの色彩が涼感を演出します。秋は月見、栗、柿、落ち葉、菊などが一般的。左の写真も、秋の上生菓子です。冬は、水仙、牡丹、山茶花など。これらはいわば、落語でいうところの「古典落語」的モチーフです。「創作落語」のように、クリスマスや運動会などを表現した上生菓子も近年では登場し、職人たちは新しいものを創り出すべく腕を磨いています。といっても、人の形などを精緻に細工するということではなく、丸や四角などシンプルな形や線を使いすぎず、最小限の技巧で抽象的に表現することが、上生菓子においては「粋」なのです。

俳句に季語があるように、お菓子の分野でも季節を表現する日本人の風流を愛でる心。いつまでも大切にしたいものです。