HOME > 健康の雑学 > 【2010年2月号】ニンニクの雑学


ニンニクの雑学


古くから滋養の源として食べられてきたニンニク。その歴史やニンニクの仲間、今話題の「ニンニク注射」など、ニンニクにまつわる雑学をお届けいたします。



滋養がありつつ、煩悩も膨らむ!?ニンニクのパワー


古くから滋養強壮を司るものとして世界各地で食べられていたニンニク。古代エジプトでは、ピラミッド建設のおりに労働者に配給されたといわれています。エジプトではツタンカーメン王の墓からもニンニクが発見されており、薬としても使われていたとのこと。古代エジプトに限らず、世界各地に似たようなエピソードが残っています。

日本に渡来してきたのは奈良時代といわれ、「万葉集」や「古事記」においてもその事実が書かれています。その一方で、基本的に食すことが禁じられていたのが禅宗の世界。今でも禅寺の山門に「不許葷酒入山門」という札が立てられていることがあります。「葷(くん)」とは「辛(しん)」の意味を含み、ネギやニラ、ニンニク、らっきょう、ノビル(野蒜)など、強い臭いを放ち、辛みのある野菜のことを指します。これらの野菜とお酒を摂取したものは山門に入るべからず、といった意味が「不許葷酒入山門」に込められています。単に臭いがダメというより、ニンニクに代表されるこれら野菜がもたらす強壮効果が淫欲をも掻き立ててしまい、煩悩を膨らませてしまうから禁じたといえるでしょう。精進料理には肉・魚が使われていませんが、これら「葷」もNGな場合があるんですね。

その一方で、ニンニクは僧侶が厳しい修行を行なううえで欠かせなかったもの、という説もあります。たとえば「行者ニンニク」。日本古来の山岳信仰に道教や密教などの教えが絡んで生まれたといわれる「修験道」の修行者(行者)から、その名がついたといわれています。険しい山で修行する行者にとっては、貴重な栄養源だったことでしょう。また、ニンニクに負けず劣らずの栄養を含んだ行者ニンニクは、主に寒冷地に自生していたため、行者のみならず一般の人々の栄養確保にも一役買っていたはずです。

街中にも自生しているニンニクの仲間「ノビル」


もうひとつ、ニンニクの仲間としてご紹介したいのがノビル(野蒜)です。日本神話のヒーローであるヤマトタケルの東征神話では、足柄山で白鹿に化けた地の神を「蒜」で退治するエピソードがあり、この「蒜」はノビルではないかといわれています。古くから自生していたノビルは現在でも北海道から沖縄まで、市街地の道端や公園の植え込みなど、至るところでみることができます。

写真のノビルは、昨年の春に東京・荒川の土手で採取したもの。土の上は緑色をした線状の葉が茂り、スコップで掘り起こすと白い鱗茎が現れます。このときは3月頃で、鱗茎もパチンコ玉くらいの大きさでしたが、ピンポン玉くらいの大きさになることもあります。

葉も鱗茎も生で食べることができますが、刺激が少々強いため、サッと湯通ししてから鱗茎を味噌につけて食べるのがおすすめ。シャクッとした食感で香りも鮮烈。葉っぱはニラ、鱗茎は玉ねぎのような風味があります。味噌汁の具や、てんぷらの具としても最適です。

一見するとイネ科の雑草に似ていますが、葉っぱをちぎってにおいをかいでみると、かなり強めにネギやニラと同じような臭いがします。もし採取して食用にする際は、この臭いの有無を必ず確認すること。春先は、根に毒を持つ水仙や彼岸花も花が咲いていない状態であるため、見た目だけではこれらの植物と間違えてしまう可能性があります。できれば野草の知識を持つ方といっしょに出かけましょう。


「ニンニク注射」ってニンニクのエキスが入っているの!?


昨今よく耳にするようになった言葉「ニンニク注射」。肉体を酷使するスポーツ選手や、多忙な芸能人などが、よくニンニク注射を愛用しているなどと報道されています。この注射、一体どんなものなんでしょうか?

その名前だけをみると、いかにもニンニクのエキスが入っていそうですが、実際は入っていません。ニンニク注射の主成分はビタミンB1。これは肉や魚などに多く含まれる成分で、体内に摂り入れた糖分を分解してエネルギーにする役目を担います。つまりビタミンB1が不足すると、生み出されるエネルギーも少なくなり、結果として倦怠感や疲労感を覚えやすくなる、というわけです。

現在では美容外科などでもニンニク注射を導入しているところが増え、疲れを感じている一般の方の中にも愛用者が増えているとか。疲れた筋肉に貯まる乳酸をすみやかに除去するため、筋肉痛や関節痛の早期回復にも力を発揮するといわれています。その他、二日酔いや睡眠不足などに陥っているハードワーカーの方も、会社の昼休みなどを利用してニンニク注射を打ちに来ているようです。

ではなぜ「ニンニク注射」と呼ばれているのか?おそらくは注射直後、フワッとニンニクの臭いを鼻孔に感じることからその名がついたようですが、その臭いは一瞬のものです。

ちなみにクリニックによって「ニンニク注射」の成分は異なることがあります。主成分がビタミンB1なのは共通していますが、風邪の初期症状においてはビタミンCも加えたニンニク注射を施すなど、注射を打ちにくる人のニーズにより応えるようにしているようです。

とどのつまりは「ビタミン注射」ということなんですが、やはり「ニンニク」という言葉が使われているぶん、効き目がありそうな気がしますよね。