HOME > 研究員のウンチク > 【2008年3月号】シビレてわかるあなたの血管年齢


シビレてわかるあなたの血管年齢


最近は椅子の生活が多くなり正座する機会も少なくなりました。たまに正座をするとしびれや、正座後に立ち上がろうとしても思うように足を動かせないジワジワとした感覚など誰しも感じるものだと思います。



正座におけるしびれ感にも、なるほどいろんな感覚がある。


調べていましたら、正座における足のしびれ感と血流の関係を調べた研究報告(健康人の正座によるしびれ感と末梢血流状態との関係、佐藤一美ら、山梨大学看護学学会6 (1) 2997 )に目がとまりました。この報告では、しびれ感を「ジンジン」「ピリピリ」「チクチク」「ざわざわ」と4つに分けて表していましたが、「ジンジン」「ざわざわ」は主に正座中に感じられるもので、血流の減少により感じられ正座を終えて血流が回復すると減少すること、「ピリピリ」「チクチク」は血流減少とはあまり関係が無く、正座解放後の血流が増加した時に主に感じられることを示していました。これら感覚を生じさせる末梢神経に対する刺激と血流変化との関係が推定されていました。



血管の内側の細胞について、いま見えてきたもの。


最近、「血管年齢」なる言葉をよく耳にするようになりました。また「ヒトは血管と共に老いる」は有名なWilliam Oslerの言葉ですが、血管の老化は動脈硬化のプロセスとも考えることができ、最近話題になる事の多いメタボリックシンドロームを代表とする生活習慣病とも非常に関係の深いところです。この血管の老化と血管内皮機能の関係が注目されています。以前は血液が固まらないように血管の内側をコーティングするものと考えられていた内皮細胞ですが、実は血管の機能維持に重要な働きをしていることが明らかになってきておりノーベル医学賞にもつながったものです。



正座時の足のしびれ感と、血圧測定後の腕の感覚との接点。


ここで血管内皮機能をとりあげたのは、正座におけるしびれ感と関係があるかもしれないと思われたからです。内皮機能検査の多くは、血圧を測定する際に行われるようにマンシェット(腕に巻きつける袋状のベルトのことで中に空気を入れて膨らませ腕を圧迫するもの)を用いて血流を止め、一定時間後に空気を抜いて血流の戻した際の血管の太さや、血流・脈波の変化を観察することにより行われます。我が身を用いてこの種の検査を行ったことがありますが、マンシェットを膨らませて血流を止めているときや、血流再開させた後に感じられる腕の感覚は、正座しているときや正座後のしびれ感によく似ていました。



足のしびれ感が、血管の元気度を知る目安にもなる?!


正座したときのしびれ感も注意すれば血管内皮機能の目安になるかもしれません。正座を終えた後の血流増加は内皮機能が良好なほど大きいと思われます。上で述べた報告によれば「ピリピリ」「チクチク」などの血流増加時に生じる感覚がより明確になるのではないかということです。正座した後のしびれ感が以前より弱くなってきたと感じたときには、血管内皮の働きを思い浮かべて生活習慣を見直してみては如何でしょうか。



■江崎 宣久
(養命酒・主任研究員)