HOME > 特集記事 > 【2017年2月号】 花粉症の7つの疑問にお答え!

花粉症の7つの疑問にお答え!

日本人の4人に1人は花粉症といわれる中、近年、花粉症についてさまざまな新事実が明らかになってきています。そこで、花粉症に関する7つのポイントと普段の生活の中で気を付ける対策について、花粉症治療の名医に伺います。


お話を伺った先生: 遠藤耳鼻咽喉科・アレルギークリニック院長 遠藤 朝彦 先生

1972年東京慈恵医科大学卒。同大学医長を経て、1999年に遠藤耳鼻咽喉科・アレルギークリニック院長に就任。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会元代議員、日本体育協会公認スポーツドクターなどを兼務。文部科学省委託「スギ花粉症克服に向けた総合研究」、環境省委託「花粉症観測予測システムに係わる検討委員会」などに携わる。



花粉症の7つの疑問にお答え!

1 | 誰でも花粉症になる可能性があるの?

8割の人は遺伝的に花粉症やじんましん、ぜんそく、アトピーなどのアレルギーを起こす体質なので、今は花粉症でなくても、突然、花粉症になることがあります。花粉症以外のアレルギーのある人やその親族は、花粉症になりやすいといえます。高齢になると免疫力も低下するので花粉症になりにくくなりますが、90歳で花粉症を発症した例もあります。

マスク着用イメージ

2 | なぜ花粉が飛ぶとアレルギーが起こるの?

花粉アレルギーの原因となる「抗原」(スギ花粉症の場合はスギ花粉)が体内に入ると、免疫細胞がそれを異物かどうか判断します。異物と判断した際、抗体を作ってアレルギーを起こす準備段階に入ることを「感作(カンサ)」といいます。抗原が侵入する経路が肌の場合は「経皮感作」、鼻やのどの気道など粘膜の場合は「経気道感作」といい、花粉症のほとんどは後者です。

3 | 春に花粉症が多いのはなぜ?

春の日本人の花粉症の約7割は、早春から飛散するスギ花粉が原因です。春は冬の乾燥した冷気で鼻やのどの粘膜がはがれて弱っているため、スギ花粉が粘膜に付着しやすく、花粉症の症状が出やすくなります。

スギ林イメージ

4 | 沖縄に行くと花粉症が治るって本当?

スギは九州から北海道の南までスギ林が分布していますが、沖縄にはスギがないので、沖縄に行けばスギ花粉による症状は一時的に治まります。ただ、花粉症が完治するわけではないので、本州に戻れば再び症状が現れます。

沖縄イメージ

5 | 花粉症の人はトマトやリンゴを食べちゃダメって本当?

花粉症の人が特定の新鮮な野菜や果実を食べると、短時間で口唇や口腔が赤く腫れたり、のどがかゆくなったりすることがあります。これを「口腔アレルギー症候群」(OAS:oral allergy syndrome)といいます。花粉症の人全員に起こるわけではありませんが、口腔アレルギーが起きたことのある人は、原因になる食材を避けましょう。

  • スギの花粉症の人はトマトに注意!

    スギ花粉症の人は、トマトを食べると口腔アレルギーになる場合がありますが、発症する頻度は、スギ花粉症全体の10〜20人に1人程度です。

  • シラカバの花粉症の人はリンゴやサクランボに注意!

    北海道や長野に多いシラカバ花粉症の40〜50%は、リンゴやサクランボ、モモなどを食べると口腔アレルギーになることがあります。
    このほか、ブタクサや牧草などイネ科植物の花粉症の人はメロン、スイカなどウリ科の植物を食べると口腔アレルギーが起こる可能性があります。

6 | 花粉を飲んで完治できるって本当?

アレルギーの原因となるものを徐々に体内に入れて、抵抗力をつける方法を「免疫療法(特異的減感作療法)」といいます。スギ花粉症の免疫療法には次の2種類があり、いずれも花粉症を唯一根治できる方法です。

舌下免疫療法
… スギ花粉を精製したものを舌の下に滴下して飲み込む方法。
皮下減感作療法
… スギ花粉を精製したものを皮下に注射する方法。

※舌下免疫療法、皮下減感作療法、いずれも必ず専門医の指導の下で行ってください。

どちらも花粉が飛散している時は治療できないので、花粉時期が終わってから治療を始めると、翌年には6割の人の症状が軽減し、2年続けるとさらに多くの人が軽減します。
なお、今はまだ実験段階ですが、将来的にはアレルギー原因物質を入れた食品を飲食することで、花粉症を治す方法が出てくる可能性があります。

7 | 花粉症は胃腸にも影響があるの?

花粉症の人の胃腸に花粉が入ると、アレルギー症状が出て下痢や便秘になる人がいます。
また、もともと胃腸の調子がよくない人が、花粉症になって胃腸が悪化する場合もあります。
花粉症の免疫療法を行うことで、胃腸の調子がよくなる人も少なくありません。

花粉症予防の極意!

花粉症を防ぐには、花粉が飛散する前から対策を徹底する必要があります。

花粉が飛散する前から乾燥対策を!

冬の太平洋側は非常に湿度が低く、特に東京は同緯度のパリやミュンヘン、サンフランシスコなどの主要都市と比べても1番乾燥しています。スギ花粉飛散前の冬から、鼻粘膜を保護する習慣をつけることで、花粉が飛び始めても花粉症の症状を軽減できます。

鼻粘膜の顕微鏡写真

左:正常な鼻粘膜の人は、花粉症の症状が悪化しにくい。
右:乾燥と冷気にさらされて荒れた鼻粘膜は、花粉症が悪化しやすい。

乾燥対策1 即席加湿装置で室内の湿度をキープ!

暖房で乾燥しがちな室内の湿度を上げるには、洗面器などに水を張り、そこにペットボトルなどを立て、日本手ぬぐいをかぶせます。乾燥した部屋ほど、手ぬぐいが洗面器の水をぐんぐん吸い上げ、室内の湿度を上げます。手ぬぐい全部がびしょびしょになるようなら、室内が相当乾いている証拠です。室内に洗濯物を干す方法もありますが、洗面器に水を張る方法のほうが加湿効果を得られます。

簡易加湿器

洗面器と手ぬぐいで作る簡易加湿器。遠藤先生のクリニックの待合室や診療室にも設置されています。

乾燥対策2 濡れガーゼマスクで鼻粘膜を保護!

花粉飛散前の冬のうちから、水で湿らせた濡れガーゼを鼻の下に当て、マスクの左右に隙間ができないようにして、あごまでスッポリ覆って出かける習慣を!鼻粘膜を保護することで、花粉症を悪化させる要因になるインフルエンザなどの感染症予防にもなります。
通常のガーゼマスクは50ミクロン以上の物質しか防げませんが、濡れガーゼ1枚をマスクの下に入れることで、20ミクロンの花粉も防げます。花粉は水に溶けるので、外出後にマスクを洗えばまた使えます。

マスク着用イメージ

花粉飛散予測情報に敏感に!

花粉の飛散状況は、インターネットで各地の詳しい状況を調べられます。関東の場合は、「とうきょう花粉ネット」や環境省花粉情報システム「はなこさん」でチェックすることができます。毎年2月1日から全国各地の花粉飛散データが表示されるので、花粉症の人は、花粉飛散が多い日はできるだけ外出を控えましょう。
なお、花粉症の症状は花粉が飛散し始めてしばらくしてから表れるので、すぐに表れる場合は花粉症ではなく、冬の乾燥による鼻風邪や鼻炎の可能性があります。

花粉の常識・非常識

  • 今の花粉症の薬はすぐに症状を軽減できるので、花粉症の薬を花粉が飛散すると予測される何週間も前から飲む必要はありません。
  • 花粉飛散時期にコートや帽子を室内に持ち込むことに神経質になる人がいますが、室内ではたかない限り、そんなに簡単に室内に花粉がまき散らされるわけではありません。
  • 花粉は重いので、室内に入り込んでも常に空中にフワフワと漂っているわけではなく、床などに落下してしまいます。


まとめ

花粉が飛散する前から対策を講じておくことで、花粉症の症状を緩和できます。また、日数はかかりますが、人によっては完治することも可能です。早め早めの対策で、つらい花粉症とおさらばしましょう!



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