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ハーブ×お酒の科学を楽しもう! 魔女に学ぶ?! 花のリキュールのつくり方♪

待ち遠しい春風と共に、芳しい花々とハーブの季節の到来です。今月の元気通信は、花やハーブを使った香り高いリキュールをつくる体験講座のレポートです。 “ハーブの魔女”こと薬学博士の村上先生に、健康酒「エリキシル」の科学や、この季節にぴったりの花のリキュールのつくり方を教えていただきました!

花の香りと色に秘められた薬効とは?リキュールを楽しみながら学ぶ植物療法

1月にトトラボ 植物療法の学校にて、植物療法に関わる活動を行なっている薬学博士の村上志緒先生による講座「お花のリキュール(エリキシル)づくりを楽しむ」が開催されました。

講座の様子

さまざまな花のリキュールをテイスティングしながら、村上先生の講義を真剣に聞く参加者のみなさん。

お話を伺った先生:株式会社トトラボ 代表・薬学博士 村上志緒 先生

早稲田大学及び早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。理学修士。東邦大学大学院薬学研究科博士後期課程修了。植物療法学(民俗薬草文化、作用機序、特に向精神作用)を研究。日本のハーブ、ネイティブアメリカンのハーブ、そして2009年からは南太平洋フィジーのハーブが研究テーマ。人と自然とのつながりから生まれる植物療法について、自然・生活文化・科学の観点から学ぶセミナーやワークショップを展開。




Lesson 1 古来より親しまれたメディカルハーブのお酒

各種のハーブをお酒に漬け込んだ「リキュール」

古来より花やハーブを健康に役立てる植物療法が各地で行われてきました。そんな植物の薬効成分と、古くは医薬品として考えられていたお酒を融合した薬酒も世界各国でつくられてきました。ハーブや果実をお酒に漬け込んだリキュールは、ヨーロッパの修道院の伝統的なレシピが今に伝わるものです。例えば杏の種(杏仁)が漬けられた「アマレット」や、ハーブやスパイスを配合したワインの一種「ベルモット」なども有名なリキュールの種類です。邪気を払い、長寿を願ってお正月に飲む「お屠蘇」も、山椒や肉桂などの生薬を漬け込んだ和のリキュールです。

香りや味を楽しめる健康飲料
「エリキシル」とは?

メディカルハーブなどをその目的、用途に応じ適切な形に製したものを「剤形(ざいけい)」といい、薬酒など水とエタノール(アルコール)の混液で浸出した剤形は「チンキ剤」といいます。「エリキシル」はエタノールを含むチンキ剤の一種で、甘味や芳香を持たせたものをいいます。

エリキシルイメージ
花のリキュールは風味豊かでヘルシーなエリキシルとして楽しめます。


Lesson 2 味わってみよう 多彩な植物のリキュール

村上先生手作りのさまざまな植物のリキュールを実際にテイスティングして、その香りや味を飲み比べました。リキュールを保存する際、微生物の繁殖を防ぐためにエタノールを全体の25%以上配合、もしくは砂糖を全体の40%以上配合するのを目安にするのがポイントだそう。

ハマナスとサクランボのリキュール

初夏に赤紫色の花を咲かせるハマナスのリキュールの赤味は水溶性のアントシアニン。右はウォッカに、左は白ワインに漬け込んだもの。参加者から杏仁のような香りがするという感想も。ホットでもいけるそう。中央はサクランボの果実をウォッカに漬けたリキュール。サクランボを思わせる甘い香り!

早生ミカンのリキュール

秋に収穫された小ぶりの早生ミカンをホワイトリカーと砂糖に漬け込んだリキュール。爽やかな酸味があるのでハチミツなどを入れて飲んでも美味。

みかんの花のリキュール

みかんの花のリキュールは、花が咲きたてのときに1日ほどウォッカに漬けてつくります。ほんのり上品な香りが立ちます。

橙とユズの花のリキュール

左の橙(だいだい)の花もみかんの花と同じように1日ほどウォッカに漬けるだけでビターオレンジの香りがほんのり。右はユズの果皮をウォッカに漬けたリキュール。まろやかな芳香が快い。


花の香りや色に秘められた誘引力

花は昆虫を誘引するために、昆虫が好む香りを発します。その香りには昆虫を誘引する賦活作用があり、人も花の香りに惹きつけられ、その香りによって活性化します。また、アントシアニンに代表される植物の色素には、抗酸化作用もあるので、花の香りや色を楽しむリキュールには、酸化を防いで代謝をアップする働きが望めるのです。

昆虫を魅了する花のワナ

花がカラフルで美しい理由の1つは、昆虫の目を引くためです。花はハチやチョウに花粉を運んでもらって受粉するので、昆虫が好む色や香り、形状をしている必要があるのです。例えば開花した月見草は人の目には白っぽく見えますが、ミツバチの目には蜜や花粉のあるスポットがもっとくっきり見えます。蘭の花の中には、ある種のオスのハチをおびき寄せるためにメスのハチそっくりの毛深い体の形状をしている種類もあります。だまされてその蘭に抱きついたオスバチは、花粉をいっぱいつけることになり、自ずと蘭の受粉の手伝いをすることになるのです。

月見草
同じ月見草でも、ヒトには右のように見え、ハチには左のように見えるそう。
(※村上先生が見せている本:『植物の私生活』山と渓谷社)


Lesson 3 作ってみよう 華やかな花とハーブのリキュール

いよいよ花とハーブの入ったリキュールづくりにチャレンジ!といっても、材料を容器に順に入れてアルコールに漬け込むだけなのでとても簡単です。1カ月後には花とハーブが香る自家製リキュールが完成!

材料

  • ローズ大さじ2杯、オレンジフラワー大さじ1杯
    (いずれもハーブ専門店でドライハーブを入手してください)
  • シナモンスティック、スターアニス
  • 白糖、ホワイトリカーもしくはウォッカ(アルコール度数35%以上)
  • 密閉できるガラス容器

華やかな花とハーブのリキュール 材料

つくり方

  1. 1)容器に白糖を大さじ1杯入れる。

  2. 2)ローズ、オレンジフラワー、スパイスを入れる。シナモンスティックは折って入れる。

    華やかな花とハーブのリキュール 作り方2

  3. 3)ホワイトリカーまたはウォッカを100ml弱注ぐ。

    華やかな花とハーブのリキュール 作り方3

  4. 4)1カ月ほどそのまま浸しておけば完成!

    華やかな花とハーブのリキュール 完成

でき上がったリキュールは、茶濾しなどで濾していただきます。花の色や香りを楽しみながら、ストレートで飲んでナイトキャップにしたり、炭酸で割ったり、お好みで楽しんでみてください。口にじっくり含ませていただくと、花の香りをより豊かに感じられます。

Point

  • 糖は抽出と保存のために必要。白糖の代わりにミネラルの多い黒糖を入れてもOK。
  • シナモンなど疲労や冷えを改善するハーブを入れること。
  • シナモン、スターアニスなどスパイスとして用いられるハーブは代謝を活性化し、味や香りも整えるのでエリキシルにぴったりです。ただしスパイスは摂り過ぎると血行が過剰に促進されることがあるので適量にしましょう。
  • お好みでクローブやカルダモンを加えたり、ショウガを皮ごとスライスしたものを3〜4片入れるのものおすすめ!

村上先生おすすめ!ほんのりピンクの桜リキュール

桜の開花する頃には、桜のリキュールでお花見を楽しんでみてはいかが?

つくり方
  1. 1)まず市販の桜の塩漬けを水洗いし、残った塩をつまようじなどを使って落とします。

  2. 2)次に約40%のウォッカをミネラルウォーター(軟水)で20%に薄めて漬け込みます。

  3. 3)1〜2晩漬けておくだけで、ほんのり桜色に染まり、桜特有のクマリンの成分が香って飲み頃になります。

桜リキュール

まとめ

花の香りや色を楽しみながら心身を癒せるリキュールは、活動的になる春にぴったりですね。簡単にできる花の自家製リキュールをぜひご自宅でお試しください!
(※あくまでも自家用として適量をお楽しみくださいね!)



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