HOME > 特集記事 > 【2013年12月号】 冷えや胃腸に効く温泉の秘密♨

冬もお腹の中から冷え知らず!温泉でほっこり 湯活

木枯らしの吹く季節は、あったか〜い温泉が一段と恋しくなりますね。そこで今月の元気通信は、科学的に見た温泉効果について、温泉療法の専門ドクターに伺いました。温泉療法の4大効能や、冷えや胃腸に効く温泉の秘密、さらに胃腸にいいといわれる名湯「四万温泉」の楽しいレポートも!この冬は、温泉でじんわり“湯活”して、冷え知らずでいきましょう!




温泉療法の専門ドクターに訊いた!〜冷えや胃腸に効く温泉の秘密〜

「温泉は家庭風呂より断然気持ちいいよね!」「温泉に入ると芯からあったまって冷えない!」――よくそんな声がきかれますが、それにはちゃんと科学的な理由があるのです。サイエンスの視点で温泉の健康効果について長年研究活動をしている日本温泉気候物理医学会の専門ドクター猪熊茂子先生に、温泉療法の医学的効果や、冷え・胃腸に効く泉質について教えていただきました。


お話を伺った先生 猪熊 茂子博士
東京大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター・リウマチ科部長。第39回International Society of Medical Hydrology and Climatology(ISMH:国際温泉気候物理医学会)世界大会会長(20140511-14、京都国際会館)、第15回日本リウマチ学会関東地方会会長、第3回日本アレルギー学会春季臨床大会会長、日本温泉気候物理医学会 前理事長・温泉療法医会会長・温泉療法専門医、第72回日本温泉気候物理医学会総会・学術集会会長 日本内科学会認定医などを務める。



温泉療法の「4大健康効果」とは?

温泉療法とは、自然環境の持つ生体機能の調整作用を最大限に生かした自然療法の1つで、フランスなど地中海沿岸諸国では国民健康保険でも認められています。温泉王国の日本でも、古来より温泉地に長期滞在して療養する「湯治」が民間の温泉療法として活用されてきました。温泉療法の健康効果は、次の「1.温熱効果 2.水(水圧・浮力)効果 3.化学効果 4.温泉地効果」の4つに大きく分けられます。

1.温熱効果――温泉で体の芯からぽかぽかになるワケ

「温泉に入るとあったまる」と感じるのは、体表温度ではなく、身体の深部体温が上がっているからです。日本人の多くは、約41℃の高温のお湯に10分浸かるというのがスタンダードな入浴スタイルですが、そうすると深部体温が1.5℃上昇します。人は恒温動物なので、体温が上がると、末梢の毛細血管が拡がり、熱を放散しようとします。そのため、酸素を含んだ血液が全身を巡り、血行がよくなってあったまるのです。

温泉の源泉は必ずしも高温とは限らず、25℃以下の源泉などもあり、熱くも冷たくも感じない不感温度の低温温泉水を備えている所があります。低温温泉水に浸かると毛細血管がきゅっと収縮し、その後、熱い温泉に入ると血管が拡張します。 つまり、冷温と高温に繰り返し入る「交代浴」をすることで、血管が鍛えられて血流がぐっとよくなり、冷えを改善することができるのです。
また、40℃以上の熱いお湯に浸かると交感神経が優位になり、39℃以下のぬるめのお湯に浸かると副交感神経が優位になってリラックス効果が得られ、結果的に熱い湯でもぬるい湯でも体調が整います。

2.水(水圧・浮力)効果――温泉で体がフワッと心地よくなるワケ

水中では空気中より圧力が大きいので、温度に関わらず入浴すると水圧で体がぎゅっと圧迫されます。いうならば、快いストレッチソックスの中に全身すっぽり入っているような感じです。すると、体内の余分な水分もぎゅっと押されて毛細血管の中に戻ります。末梢の細い血管は、大動脈のような太い血管と違って水分を通すのです。水分が血管に入ると、血管内を走る血液量も増え、心臓に負担がかかるので、血管内の水分を減らすべく腎臓で尿に変わります。その結果、余分な水分が尿になって排出され、むくみがとれて体が軽くなるのです。

また、水には浮力もあるので、水中に胸まで浸かると、空気中にいるときの約8割も体重が軽くなります。特に体重を支えている膝などの関節や筋肉の負担が軽減されます。
さらに、水は空気よりも抵抗力が大きいので、水中で動くだけで細かな筋肉の運動になり、浮力とあいまって、筋力が弱っている人でも効率よく運動ができます。リウマチなどのリハビリテーションに水中運動が応用されているのもこのためです。また、打たせ湯や、浴槽の床や内壁から気泡を勢いよく噴出させる泡風呂で肩こりや腰痛などが軽減するのも、水のマッサージ効果によるものです。

3.化学効果――冷えに効く温泉の成分とは?

温泉に含まれる化学成分も、健康と深い関わりがあります。日本の温泉は、単純温泉、塩化物泉、硫酸塩泉、炭酸水素塩泉、硫黄泉、炭酸泉、放射能泉など大きく9種の泉質に分類されます。
特に、医学的な見地から「冷えに最も効く」と考えられているのは、二酸化炭素が成分として含まれた「炭酸泉」です。通常、皮膚にはバリア機能がありますが、皮膚の油分と親和性のある二酸化炭素は吸収されやすく、二酸化炭素が末梢の血管に入ると、血管が拡張して血流がよくなり、酸素が放出されて、ますます血管が開くので、冷えに効果的なのです。
炭酸泉はヨーロッパに多く見られ、日本にはあまり多くはありませんが、有馬温泉(兵庫県)をはじめ、長湯温泉(大分県)、塩沢温泉(岐阜県)、みちのく温泉(青森県)、薬師温泉(北海道)など全国に点在しています。

ちなみに、浴用剤や機械などで人工炭酸泉をつくることもできますが、温泉のような天然炭酸泉のほうが気泡が小さく、血流改善効果が高いといわれています。

また、ナトリウムなどの塩化物が含まれた「塩化物泉」も保温効果が高いといえます。塩化物泉に入ると、皮膚の表面を「塩類被膜」が覆うため、体温の発散を抑えられ、ぽかぽか感が持続するのです。塩化物泉は日本ではポピュラーで、鹿塩温泉(長野県)、塩原温泉(栃木県)、塩田温泉(兵庫県)など、「塩」の字がついた温泉名が目立ちます。

4.温泉地効果――非日常空間で自律神経のバランス調整

一般に温泉は山や海辺に多くありますが、森林、海洋、高山など、空気や水が清らかで風光明媚な温泉地の気候環境も健康にプラスの影響をもたらします。例えば山なら森林浴、海辺なら海岸浴によるさまざまな効果が期待できます。
また、温泉地という日常とは異なる非日常に身を置くことで、生活リズムの乱れをリセットできます。普段、ストレスのある生活をしている人は交感神経が優位になりがちですが、温泉地で早起きをして三度の食事をきちんと摂り、森林浴や海岸浴をしながら散歩をすることで、副交感神経も回復し、自律神経のバランスが整う効果も得られます。



温泉を飲むと胃腸に効く?ぜひ試してみたい「飲泉」

日本ではあまり一般的ではありませんが、胃腸に効く泉質の温泉地では、温泉水を飲む「飲泉」と呼ばれる習慣がある所があります。
例えば、胃酸が多すぎると、胃潰瘍や逆流性食道炎の原因になるともいわれていますが、空腹時にアルカリ性の「重曹泉」を飲むと、胃酸が中和されて、胃酸過多による胃痛や胃の不快を緩和できます。
一方、胃酸が少なすぎても胃腸の働きが落ちて食欲不振になったりするので、その場合は「塩化物泉」や「炭酸泉」「硫酸塩泉」の飲泉がおすすめです。
通常、飲泉は1回100〜200tを基準に、最高でも300〜500tが限度という一定のガイドライン(環境庁が現在準備中)があります。温泉地の飲泉所には、飲泉の効能や用法、注意点などが表示されているので、それに従って飲むようにしましょう。






入ってよし、飲んでよし!日本三大胃腸の名湯「四万温泉」レポート!

室町時代から湯治場として知られ、昭和29年に国民保養温泉地の第一号に指定された「四万温泉(しまおんせん)」(群馬県)は、古来より、入浴すれば肌や胃腸によく、飲めば胃腸病や食欲増進によいといわれています。四万温泉の源泉は40カ所以上あり、泉質は源泉により多少異なりますが、多くは「ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉」です。町内には飲泉所や共同湯をはじめ、独自の飲泉所を持っている宿もあります。

『千と千尋の神隠し』のモデルになった宿も!

四万温泉を代表する「積善館」は、吉永小百合さんの主演映画『天国の駅』の舞台になり、映画『千と千尋の神隠し』のイメージモデルにもなった名宿です。昔ながらの湯治の雰囲気が漂う本館は、元禄4年建造の日本最古の木造湯宿建築。国登録有形文化財や群馬県の重要文化財に指定されています。
公式webサイトはこちら

積善館の外観
室内のイメージ


古きよき湯治の面影
積善館本館にある昭和6年建造の優美なロマネスク様式の「元禄の湯」は、群馬県近代遺産の1つ。レトロなタイル床も源泉の温もりで天然の床暖房に。源泉かけ流しの湯は42℃と爽快な熱さ。湯量豊富で、浴槽が通常より深めなので、水圧効果も一段と高く、湯上りはむくみすっきり、体の芯からぽかぽか!



源泉かけ流しの露天で森林浴
ヒノキの香り漂う内風呂と露天風呂が楽しめる「杜の湯」。湯船に浸かりながら森林浴効果も!

杜の湯 露天風呂

内風呂


四万温泉に点在する飲泉所と共同湯
飲んでも効くといわれる四万温泉に多数点在する飲泉所。源泉が異なるので成分や味、温度、飲用方法も異なります。毎日飲んでいるという現地の人も少なくありません。

積善館の飲泉所

積善館の中に古くからある飲泉所。慢性消化器疾患や慢性便秘、肥満症などにおすすめ。下痢のときは控えましょう。
塩之湯飲泉所
桐の木平商店街の一角にある「塩之湯飲泉所」は、慢性消化器疾患や慢性便秘、慢性肝胆道疾患などに効きます。
ゆずりは飲泉所と足湯

小泉の滝に向かう途上にある「ゆずりは飲泉所」には足湯も。飲むと慢性便秘や肥満症、胆石に効きます。
河原の湯
四万川と新湯川の合流点にある共同湯「河原の湯」は、外壁も湯船もワイルドな石造り。


飲泉で炊いたお粥や釜揚げうどんも
胃腸に効く四万の名湯で炊き上げた積善館の名物朝食「飲泉粥」と、同じく飲泉で茹でた「温泉釜揚げうどん」。いずれも飲泉に含まれたナトリウムのほのかな塩味が効いています。源泉の湯で茹でた温泉卵もお腹に優しい。


飲泉粥

釜揚げうどん


山間の森林で命の洗濯
清流や滝、湖、山々に抱かれた風光明媚な四万温泉は、4大健康効果の1つ「温泉地効果」も抜群です。



年の瀬は、冷えによる腹痛や忘年会などの飲み過ぎで胃腸が悪くなる人がいますが、温泉地でリフレッシュしながら、冷え改善や胃腸ケアができると一石二鳥ですね!




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