HOME > 生薬ものしり事典 > 【2016年10月号】医食同源の代表選手「刺五加(シゴカ)」

生薬ものしり事典49 医食同源の代表選手「刺五加(シゴカ)」


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今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「刺五加(シゴカ)」をピックアップしました。

アスリートもご愛用の生薬

刺五加(シゴカ)


生薬のシゴカのもとになるエゾウコギは、ウコギ科の植物です。日本では北海道のみ自生することから「蝦夷ウコギ」と呼ばれていますが、ロシアでは「エレウテロコック」、アメリカでは「シベリア人参(Siberian Ginseng)」と呼ばれています。
中国名は「刺五加(シゴカ)」といいますが、「刺」は小枝にある多数のトゲ、「五」はウコギの5枚の小葉にちなんでいます。
洋の東西を問わず、エゾウコギは優れた薬効を持つ植物として広く利用されています。


生薬「刺五加」(根茎) 生薬「五加皮」(根皮)

生薬としては、根茎が中国の植物名と同じ「刺五加」、根の皮は「五加皮」という名前で用いられています。中国では約2000年前から用いられているといわれています。
薬効としては、きょ風湿、強筋骨、強壮作用があり、関節痛や筋肉痛、腰や膝の筋力低下などに用いられてきました。また、「五加皮酒」は不老長寿の薬酒としても知られています。


ただし、エゾウコギが注目され出したのは20世紀以降です。1960年代に旧ソ連の研究により、世界で初めて抗疲労作用や抗ストレス、集中力増強などの薬効が見出されました。特に注目されたのが、朝鮮人参より優れたアダプトゲン作用です。アダプトゲンとは、生体にとって悪影響を及ぼすさまざまなストレスに対して、環境適応力を高め、生体を守る働き(非特異性抵抗力の増強)のことで、「適応源」や「環境適応源」とも呼ばれます。


さらに、宇宙飛行士が宇宙船内でエゾウコギを飲用していたことでも話題になりました。
また、1980年のモスクワオリンピックでは、メダルを独占したソ連選手の多くが、エゾウコギを飲用していたことから、世界的に注目を集めるようになりました。
日本でも、長野オリンピックで活躍した日本のジャンプ選手やスピードスケートの選手がエゾウコギを飲用していたそうです。


エゾウコギの主要成分は、エレウテロサイドE(リグナン)、エレウテロサイドA(サポニン)、エレウテロサイドB(クマリン配糖体)などです。エレウテロサイドEは、脳内ホルモンのひとつであるβ-エンドルフィンの分泌を促進するため、強い抗ストレス作用があるとされています。


これらの作用のほかにも、感冒・インフルエンザ予防、免疫力改善、糖尿病改善などの作用も確認されています。山菜としても用いられるエゾウコギは、今後の研究に期待が持たれる医食同源の代表選手といえるでしょう。