HOME > 生薬ものしり事典 > 【2016年3月号】邪気を祓う仙人の果実「桃仁(トウニン)」

生薬ものしり事典42 邪気を祓う仙人の果実「桃仁(トウニン)」


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今回の「生薬ものしり事典」は、過去にご紹介した生薬百選より「桃仁(トウニン)」をピックアップしました。

咳止めや婦人病に役立つ生薬

3月3日は「ひな祭り」ですね。この日は「桃の節句」ともいわれますが、中国では桃は邪気を祓い、不老長寿を授けてくれる仙木・仙果として親しまれています。また、古くから薬としても活用されています。

桃の中には、大きな種子のようなかたまり(核)がありますが、本当の種はその中にある白い部分で、「桃仁(トウニン)」と呼ばれます。
桃仁は、古くから咳止めの他、産後のむくみや月経不順などの婦人病の治療に用いられてきました。桃仁に含まれるアミグダリンという成分には、血液の粘度が高くなって流れが滞る症状「血滞(けったい)」を治す作用があるといわれています。

桃の花

桃の実(果肉)は、食物繊維やペクチンを豊富に含むため、整腸や便秘に効果があります。花(乾燥物)は「白桃花」と呼ばれ、緩下剤として使われています。
葉には消炎や抗菌作用があるタンニンやフラボン類が多く含まれており、乾かした葉をお風呂に入れると、あせもや湿疹に効果があることで知られています。まさに「仙人の果実」ですね。

桃の実と種子

桃の生産量ランキング(2014年)1位は山梨県、2位は福島県です。あまり知られていませんが、養命酒の工場がある長野県も全国3位の桃の生産量を誇ります。長野県は雨が少なく日照時間が長いので、糖度が高く美味しい桃が実るといわれています。