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生薬ものしり事典 27 邪気を払うパワーも秘めた健康食材「あずき」


慶事にも欠かせない日本古来の健康食材

養命酒商品開発センター 芦部 研究員

あずきはマメ科の一年草で、中国南部(四川省、雲南省)が原産地といわれています。夏から秋にかけて黄色い花を咲かせた後、10cmほどの細長いさやを付けます。

そのさやの中にぎっしり詰まっているあずきには、タンパク質や炭水化物などの栄養分を筆頭に、飽和脂肪酸のパルミチン酸、植物ステロールとも呼ばれるフィトステロール、ポリフェノールの一種フラボノイドなどが含まれています。それらの成分には、骨を強くしたり、炎症を抑えたり、高血圧や高コレステロール血症を改善する働きがあるといわれています。漢方では、あずきは利尿、消炎、脚気などに使用されます。鯉(コイ)とあずきを用いた「赤小豆鯉魚湯(セキショウズリギョトウ)」という漢方処方は、利尿効果があるとされています。

あずきは米と一緒に炊いてお赤飯として食べたり、あるいは和菓子やお汁粉のように甘い餡(アン)として食べるなど、古来より日本人の食生活に深くとけ込んでいます。登呂遺跡からもあずきが出土されており、紀元前より栽培されていたようです。世界的に見ても、あずきは米のようにとりわけ日本人に好まれる穀物のひとつといえますが、北アフリカに住むソマリ族もあずきなどの豆料理を好み、あずきをバターや砂糖と一緒に長時間煮込んだ「アンブーロ」というあずき料理はソマリの家庭でよく食べられている定番食だそうです。

あずきあずき

あずき餡のどら焼きあずき餡のどら焼き


日本では、慶時にお赤飯を食べる習慣がありますが、これはあずきに邪気を払う力があると信じられてきたからです。民俗学者・柳田國男の説によると、古来、日本人は赤米(玄米の種皮または果皮に赤い色素を含むイネの栽培品種)による赤い飯を食べていたため、慶弔時にあずきを使ってご飯を赤く染めて赤飯を食べる習慣があるそうです。遠野の伝承をまとめた柳田國男の説話集『遠野物語拾遺』には、体中にあずきを付けた正体不明の生き物が岩手県の山中にいたという言い伝えも収録されています。

遠野だけでなく、日本各地にあずきにまつわるさまざまな言い伝えがありますが、それだけあずきは古くから日本人の生活に密接な存在だったということですね。