HOME > 生薬百選 > 【2011年3月号】生薬百選 84 山椒(サンショウ)


生薬百選 84 山椒(サンショウ)


今回ご紹介するのは山椒です。山椒と言えば鰻の蒲焼きにかける乾燥粉末を思い浮かべます。独特の香りが華やかで料理にアクセントを付けてくれます。これは通常、実の皮(果皮)を乾燥させて粉にしたものですが、生の実を茹でて佃煮に入れることもあるそうです。また春の若芽はお吸い物に浮かべられたりします。この様に香辛料などとして料理に使われる山椒ですが、生薬でもあります。生薬としては最初に挙げた成熟した果皮を乾燥させたもの、もしくはそれを粉にしたものになります。
主な産地は奈良県や和歌山県などで、ミカン科サンショウ属サンショウという落葉低木です。鮮やかな赤い実をつけ、庭木としても普通に見られると思います。




中国にもよく似たものがあり、こちらは花椒(カショウ)もしくは蜀椒(ショクショウ)と言われます。同じサンショウ属の木の実ですが、別種のカホクザンショウの木の実が用いられます。花椒は麻婆豆腐や坦坦麺などの辛い料理に唐辛子と一緒に使われたりします。日本のものとは多少成分が異なるそうですが、実の形などよく似ています。


山椒
山椒
花椒
花椒

山椒も花椒も痺れるような辛さがあり、舌を麻痺させますが、花椒の方が一般的に辛味は強いと言われます。日本ではこの痺れるような辛さも、唐辛子の汗の出る痛いような辛さも「辛い」と同じ表現をしますが、中国では前者を「麻」、後者を「辣」と使い分けているそうです。以前にとても「麻」の強い花椒を食べたことがありますが、その時は1粒で舌だけでなく口の周り全体が麻痺した様になったので驚きました。
辛味成分はサンショオールとサンショウアミドで、精油成分としてリモネン、シトロネラール、β-フェランドレン、ゲラニオールなどが含まれます。鎮痛、抗菌、駆虫作用があり、芳香性苦味健胃薬、駆虫薬などの原料となります。代表的なものは苦味チンキというもので、トウヒ、センブリと併せてつくられ、辛味物質などにより、唾液や胃液などの消化液の分泌を促進し、消化管運動を活発にします。


■横田 玄(養命酒中央研究所・商品開発グループ)