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生薬百選 78 小豆蔲(ショウズク)


夏の猛暑で食欲不振になった、もしくは今だに食欲不振といった方もいるかと思います。こんな時の定番料理と言えば、スパイスをふんだんに使ったカレーと言う方も多いでしょう。そんなカレーのスパイスで欠かせないのが小豆蔲(ショウズク)です。カルダモン(Elettaria cardamomum Maton)と言った方が、分かりやすいでしょうか? この植物はショウガ科の多年草で、高さは約3mにもなるそうです。ピンクの模様の入った白いきれいな花を咲かせます。




熱帯各地で栽培され、果実を乾燥させたものがスパイスとして流通しています。インド及びグァテマラ産のものをよく目にします。インドでは昔から薬用とされ、2世紀頃に香辛料としてヨーロッパに伝えられました。日本では明治時代より苦味チンキ原料として利用されました。 果実の大きさは1〜2cm程度で、淡い黄色から緑色をしています。筋の入った薄い果皮の内側に、カドのある種子が10個程度入っていて、とても爽やかな香りがします。





香りは果皮にはなく、使用する際は果皮を除いた種子だけを用いることが多いそうです。この種子を噛むと、メントールのような少し冷たい感じがした後、特異な爽やかな香りが口いっぱいに広がります。僅かに苦味が残りますが、カレーに使われるからといって、すごく辛いわけではありません。 主成分はテルピニルアセテートというもので、胃液分泌の抑制、胆汁分泌の促進作用があります。 カレー以外に、肉料理やお菓子にも使われ、砂糖とミルクをたっぷり使ったインドの紅茶、チャイにも粉末にしたものが入れられることが多いそうです。日本ではなじみがないかもしれませんが、コーヒーに入れることもあるそうです。小豆蔲は「世界で3番目に高価なスパイス」とも言われ、1位はサフラン、2位はバニラとも。色々なものに使用されているので、加工食品などの「原材料名」を見ると意外なものに使用されているかもしれません。


■横田 玄(養命酒中央研究所・商品開発グループ)