HOME > 生薬百選 > 【2010年4月号】生薬百選 73 薄荷(ハッカ)


生薬百選 73 薄荷(ハッカ)


信州の長く厳しい冬が終わり、暖かい日差しにつつまれるようになりました。木々が芽吹き、鳥が囀りだすと気分が明るくなりそうなものですが、花粉症の方にとってはこれから鼻がムズムズ、くしゃみが止まらないという症状があらわれ、憂鬱な時期になります。おそらくこれまで、花粉症の方々は自分なりに色々対策を講じられてきたかと思いますが、その中で1度はキャンデー等でお世話になったのではないかという「ハッカ(薄荷)」について紹介します。


輪生状の花をつけたハッカ(和種ハッカ)
輪生状の花をつけたハッカ(和種ハッカ)
(日本薬局方のハッカとしては不適とされている)セイヨウハッカやミドリハッカなどは穂状の花をつける。
(日本薬局方のハッカとしては不適とされている)
セイヨウハッカやミドリハッカなどは穂状の花をつける。


ハッカは英名で「ミント」と呼ばれ、ギリシャ神話の妖精(Mentha)が女神に嫉妬され草に変えられたというのが語源の由来であるとされています。ハッカはシソ科の多年草で世界各地に分布し、交配しやすいため数百種以上の変種があると言われています。以下に現在栽培されている主な品種を記載します。

1.和種ハッカ(Mentha arvensis L. var. piperascens
解熱、発汗、健胃作用がある漢方処方に配合されている「生薬・薄荷」とは、この和種ハッカのことをさします。中国から伝わり、既に江戸時代には薬草として栽培され、現在では日本の各地に自生しています。L-メントールが多く含まれるため(65〜90%)、工業用(L‐メントールの製造用)として昭和20年頃までは大規模に栽培されていました。しかし、近年人工的に合成されたものに取って代わられ、生産量は減少しています。

生薬・薄荷
生薬・薄荷


2.セイヨウハッカ(Mentha x piperita L.)
別名「ペパーミント」と呼ばれ、アメリカやヨーロッパなどが産地です。和種ハッカと同様にメントールを主成分としますが(40〜45%)、和種ハッカほど苦みやメントールの香りが強すぎないため、お菓子の清涼剤、ハーブティー、リキュールなど様々な食品や香料に利用されています。

3.ミドリハッカ(Mentha spicata L.)
別名「スペアミント」と呼ばれ、主にアメリカが産地となっています。上述のハッカとは異なり、主成分としてL‐メントールをほとんど含まず、甘い香りがします。また、苦味もあまりないので、ハーブティーとしてはこのミドリハッカの方が好まれているそうです。

L-メントールの結晶
L-メントールの結晶


このように、同じハッカ(ミント)という名前がついていても、L-メントールを多く含むタイプ(ぺパーミント系)とそうでないもの(スペアミント系)があり、その香味は大きく異なります。普段私たちの生活に馴染みのある植物ですので、ぜひこの機会にどちらのタイプが使われているか確認してみては如何でしょうか。


■筒井 康貴(養命酒中央研究所・基盤研究グループ)