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生薬百選 61 ハシリドコロ


ハシリドコロの芽(当所見本園:2006年4月3日撮影) 春になり、山菜採りをはじめる方も多いのではないでしょうか?ここ信州は、読者の皆様方がお住まいの所よりかなり春が遅いと思います。しかし、こんな土地でも3月半ばには芽を出す植物もあります。

右写真の見た目に柔かそうで美味しそうな植物は、「ハシリドコロ(Scopolia japonica Maximowicz)」という植物です。この植物は全草に猛毒を含んでおり、名前の由来は食べると狂ったように走り回るところからきています。

前号で紹介した「フキノトウ」と間違って食べられることもあるようなので、気をつけましょう。分布は本州〜九州で、標高800mを超える当地でも元気に育っています。この植物は成長も早く、4月中旬には下の写真のような花が咲き(下写真)、6月末には枯れてしまいます。


ハシリドコロの芽(当所見本園:2005年4月12日撮影)
ハシリドコロの芽(当所見本園:2005年4月12日撮影)

さて、上で述べましたようにこの植物はほぼ全体が猛毒なので食べられません。しかしながら、この植物の葉と根は日本で薬として使われており、根(根茎)は公定書「日本薬局方」に「ロートコン」という名前で収載されています。有名な成分はヒヨスチアミン、スコポラミンなどのアルカロイド類です。これから得られるロートエキスには鎮痛・鎮痙作用があり、胃腸薬に配合されます。昔は目薬としても使われていたそうです。
しかし、これらの物質は副交感神経を麻痺させるため、用法・用量を間違えると嘔吐や散瞳、異常興奮を起こし、最悪の場合は死に至る場合もありますので素人は絶対に扱ってはなりません。

当所見本園から掘り出したハシリドコロの根(2009年3月19日) 左は生で右は乾燥品
当所見本園から掘り出したハシリドコロの根(2009年3月19日) 左は生で右は乾燥品

■ 泊 信義 (養命酒中央研究所・商品開発グループ・主任研究員)
ロートコンの使用に関しては、私もド素人です。