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生薬百選 60 蜂斗菜(ホウトサイ)


「冬来たりなば、春遠からじ」と言いますが、これは「寒くて辛い冬の後には必ず暖かい春がやってくる」、「今はたとえ辛く苦しくともやがて明るく幸せなときがやって来る」という意味の言葉です。しかし、花粉症の人にとっては、寒い冬の次には更に辛い花粉アレルギー地獄がやってくるといった感じでしょうか。ご多分にもれず、私も数年前から春になると目がかゆくなったり、風邪でもないのにくしゃみや鼻水が出たりと、憂鬱な春を過ごしています。
今年の冬は暖かな日が多かったせいか植物の動きも早く、スギ花粉もかなり早くから飛び始めているようです。そんな温かさに誘われてか、弊社見本園の片隅に「フキノトウ」が顔を出していました。フキは最も古い日本産の野菜のひとつで、平安時代にはすでに栽培が始まっていたと言われ、早春のフキノトウや花の後に地上に現れる葉の軸(葉柄)の部分を食用にします。中国では薬用としても用いています。

図1 フキノトウ(本年撮影)
図1 フキノトウ(本年撮影)
図2 フキノトウ (昨年の春撮影)
図2 フキノトウ (昨年の春撮影)

フキの生薬名は「蜂斗菜(ホウトサイ)」と言い、夏〜秋に根茎を堀とり水洗いして日陰干した物を腫物や打撲、のどの痛みなどに用います。また、フキノトウの独特の香りとほろ苦さは胃もたれや胃痛に効果があると言われています。フキの生薬名を「款冬(カントウ)」や「款冬花」などと呼ぶこともありますが、これは中国に広く分布するフキタンポポのことで日本のフキとは全く別の植物です。

図3 蜂斗菜(自作品)
図3 蜂斗菜(自作品)

最近、フキの地上部分に含まれる香り成分であるフキノン・フキノール酸・クロロゲン酸などのポリフェノール類に花粉症などのアレルギー症状を緩和させる効果があり、甜茶(テンチャ)などの花粉症に良いと言われている薬草と同等の効果があることが確認されています。特に、鼻詰まり症状に効果があるとのことです。
また、フキノトウは天婦羅や茹でて味噌を付けて食べるととても美味しい山菜ですが、フキにはビタミンB1以外の栄養がバランスよく含まれており、更にフキノトウにはカロチン・ビタミンC・鉄分なども多く含まれているなど栄養価の高い山菜でもあります。
もう少し暖かくなったら、花粉症対策と運度不足の解消を兼ねて近くの山にフキノトウを採りに行こうと思っています。



■ 石塚 康弘 (養命酒中央研究所・商品開発グループ チームリーダー)