HOME > 生薬百選 > 【2008年11月号】生薬百選56 木通(モクツウ)


生薬百選 56 木通'モクツウ)



秋のこの時期、弊社研究所の薬草見本園を散策していると、アケビの蔓からパックリと開いた果実がぶら下がっている光景に出くわすことがあります。ご存知の方も多いと思いますが、アケビの熟した果実の白い果肉の部分は甘くとても美味しく、タイミング良く見つけるとチョット幸せな気分になります。ただ、この実を手に入れるにはライバルも多く、特に野鳥との競争は熾烈を極めます。今年もいくつかの実はすでに食べられた後で、最後の一個をゲットするのがやっとのことでした(写真は昨年の秋に撮影したものです)。


写真1 アケビの花
写真1 アケビの花
写真2 アケビの果実
写真2 アケビの果実


さて、このアケビは実が食べられるだけではなく、蔓の部分を「木通(モクツウ)」といい、体にたまった余分な水分を尿として出すとともに、痛みや炎症を取り除くために使われる重要な薬草の一つです。この蔓にはトリテルペノイド、ヘデラゲニン、オレアノール酸などが含まれ、抗炎症、利尿、抗潰瘍、脂質降下などの作用が知られています。漢方では腎臓に働き、膀胱炎や浮腫、湿疹、月経不順、母乳不足などに用いられています。また、生薬名の由来は、蔓の切り口を見ると沢山の空洞が有り、息を吹き込むと通るので「木通」と名がついたそうです。



写真3 木通の断面
写真3 木通の断面
写真4 生薬「木通」
写真4 生薬「木通」



その他に、アケビの果実も生薬「八月札(ハチゲツサツ)」といい、種子も「預知子(ヨチシ)」と呼ばれ、中国では胸脇部の痛みや胃痛、下腹部痛、月経痛、腰痛などに用いられています。また、中国の研究では乳がんや尿路結石などのへの効果も報告されています。  このように蔓、果実、種子など多くの部位が生薬として利用されているアケビですが、クスリとしてだけではなく新芽や果実の皮の部分を料理に用いたり、丈夫な蔓を使ってカゴやリースを作ったりできるなど、とてもありがたい植物です。


■ 石塚 康弘 (養命酒中央研究所・商品開発グループ チームリーダー)