HOME > 生薬百選 > 【2008年8月号】生薬百選53 紅花(コウカ)


生薬百選53 紅花(コウカ)



生薬 紅花(コウカ)の基原植物であるベニバナは、エジプトや中近東辺りが原産地であり、日本へは飛鳥時代(6世紀頃)にシルクロードを経て、染色技術や栽培方法とともに伝わったといわれています。国内での栽培は東北地方が有名ですが、長野県にある弊社研究所の見本園でも7月上旬ころから花が咲き始めます。
ベニバナにはいくつかの品種があり、総苞片にトゲがありアザミに似た感じの花を咲かせる「最上(モガミ)ベニバナ」が最も有名です。このトゲはとても鋭く硬いため、花弁を収穫するのは朝露でまだトゲが柔らかい早朝のうちに行われています。この「最上ベニバナ」の花は、咲き始めは鮮やかな黄色ですが、開花の最盛期を過ぎた頃から徐々に赤色に変化します。今ではトゲの無い品種も栽培されていますが、ベニバナと言えば「トゲ」のイメージが有り、トゲの無い品種を見ていると何か物足りなさを感じてしまうのは私だけでしょうか?


最上ベニバナの花と総苞片
最上ベニバナの花と総苞片
最上ベニバナの全景
最上ベニバナの全景
トゲナシベニバナの花
トゲナシベニバナの花


中国のベニバナの花
中国のベニバナの花

過去に研究所で栽培した中国のベニバナの中には「最上ベニバナ」とは異なり、咲き初めから花弁の色の赤味が強く、開花の最盛期には鮮やかな朱色を呈する品種がありました。赤色の成分であるカーサミンを「最上ベニバナ」の1.5倍ほど多く含んでいる他、花弁が長く、総苞片が少し捩れ、トゲも比較的少ないなど面白い形質を持っていました。

この品種がシルクロードを経て古の日本に伝わり栽培が広まっていたら、現在のベニバナのイメージもずいぶん違った物になっていたのでは?と想像したりするのも面白いと思います。


国内のベニバナは主に化粧(紅)や染色に用いるため栽培されてきました。花弁には水溶性の黄色の色素と水に溶けにくい赤色の色素を含んでおり、水の中で揉むと黄色の色素だけが溶け出し、赤色の色素だけが残ります。この色素はアルカリ性の水には溶けますが、水を酸性にすると再び溶けなくなります。この性質を利用して布類などの紅花染めが行われてきました。 ベニバナは染料だけではなく、花弁を乾燥させた物を生薬「紅花(コウカ)」と言い、血行をうながし鬱血を除く漢方薬としても用いられ、婦人病特有の血行障害による生理痛や月経の閉止、産後の腹痛などに効果があるといわれています。また、紅花の種子からは血管壁についたコレステロールを除く働きを持ち、高血圧予防に効果があるとされているリノール酸を含むサフラワー油がとれ、サラダ油、マーガリン等の食用油として使われています。 最近では、ベニバナの種子に含まれるポリフェノール成分に血管年齢の改善効果があることが明らかになるなど、人の生活に有益な植物であることが再確認されました。


生薬「紅花(コウカ)」
生薬「紅花(コウカ)」



紅花茶

紅花は薬局や健康食品の販売店などで比較的簡単に入手できます。紅花1〜2gにお湯180mLを注いで飲む「紅花茶」や、紅花50〜60gに焼酎1.8Lと氷砂糖500gを入れ2〜3ヶ月間冷暗所で寝かせた後にろ過した「紅花酒」などの形で生活に取り入れては如何でしょうか。「紅花酒」はロックや水割りはもちろん、炭酸水やレモンを入れたり、お好みでハチミツなどを加えて飲むと更に美味しくいただけます。



■ 石塚康弘(養命酒中央研究所 商品開発グループ チームリーダー)